最近発表された「Times Higher Education(以下、THE)」世界大学ランキング。
日本のほとんどの大学が10年前から大幅に順位を下げている。
世界大学ランキングにおいて最も重要視されるのは研究力。
しかし日本ではその研究力が近年大きく低下している。
「国立大学の法人化」により、それまで文部科学省の内部組織であった国立大学が、
それぞれ独立した法人に再編された。
「国立大学の法人化」以後、国の運営費交付金は、年間約1%(約100億円)ずつ削減され、
これまで総額2000億円以上が削減されている。
それにより研究費は減少。
国の規制緩和の多くは、要は国からの支出を削減すること。
それにより、機関などが疲弊しても、そんなことは知ったことではない。
もう国立ではないのだから、自分のことは自分で、自助しなさいということだ。
政府は、ことし6月、大学債を発行する要件を緩和して、資金の調達をしやすくした。
東京大学は、国はあてにならないと、自ら「大学債」と呼ばれる債券を初めて発行し、
200億円を調達する。今後10年で、1000億円規模の資金調達を検討しているという。
大学も金を稼ぎなさいということだ。
毎年、利息を払い40年後に返済する仕組みと気の長い話だが金を生みにくい大学では致し方ない。
教育とは金を稼ぐことになってくる。
だから、竹中平蔵などは、しきりに小学生のころから株投資の授業を取り入れろと進める。
今後私立大学のように、資金運用にも力を入れることになるのだろう。
日本の大学の理系論文数が、2000年ごろから伸びが止まり、20年近く頭打ちの状態になっている。
世界では米国や中国の論文数が飛躍的に伸びており、質の高い論文数を示す国別世界ランキングで、
日本は00年の4位から16年は11位に低下。
2015年に国際的な影響力が強い科学雑誌に掲載された日本の論文数は、2005年に比べて600件減少。
学術的価値が高いことを示す被引用論文数は12位に後退。
17年の1位は米国の24.7%、中国は2位で22.0%。さらに注目度が高い上位1%の論文では米国は29.3%、中国は21.9%となった。
中国の17年(16~18年の平均)の論文数は30万5927本。米国の28万1487本を上回り1位となった。
3位はドイツで6万7041本。日本は6万4874本で前年と同じ4位だった。
4位とはいえ中国とは雲泥の差だ。
論文の世界シェアをみると中国は19.9%、米国は18.3%。3位は4.4%にすぎない。
米中2強時代は鮮明だ。
中国は研究開発費でも米国を猛追。研究者数は最多で、米国留学などで育成を進めた。
日本ではなく米国だ。
目先の利益に走った安倍政権は、基礎研究の交付金を削減し、
成果がすぐに見えそうな研究にしか金を出さない、その結果が顕著に表れている。
多くのノーベル賞受賞者や専門家、そして私も以前から指摘してきたが、
目先ばかりを見ていると、大きな魚を逃し、気付くと全てで後れをとることとなる。