9月に「新型コロナのパンデミックは終わった」と発言して物議をかもしたバイデン米大統領。
10月18日米国の生物兵器防衛を強化する覚書に署名した。
覚書によれば、ホワイトハウスの監督の下、生物兵器防衛に向けた政府機関間の政策調整を進めるとともに、
米情報機関に対して、脅威を監視し、進化する脅威への適応能力を高めることを求めている。
これを実現するため、連邦議会に、今後5年間で880億ドルの予算を求めている。
政府高官は「国家生物兵器防衛戦略により、自然発生、もしくは意図的であっても、
伝染病の蔓延を事前に防ぐことができる」と胸を張るが、
パンデミック発生から2年半が経過しても新型コロナが再燃する恐れもあり、発生源も特定できていないのに、
次のパンデミックを未然に防ぐことができるのかとの声が上がっている。
新型コロナについて、武漢の市場で売られていた野生動物(自然宿主)から人に感染した説と、
武漢ウイルス研究所から流出した説が有力だ。
米情報機関は昨年8月に新型コロナの発生源に関する報告書を公表したが、
中国から十分なデータが得られないことから明確な結論を出すことができなかった。
その後、米ネットメディアの情報公開請求により、米国立衛生研究所(NIH)が多額の資金を出して、
中国の武漢ウイルス研究所でSARSウイルスの「機能獲得実験」を実施させていたことが明らかになった。
新型コロナの発生に米国政府が関与している可能性が浮上したことから、
共和党は議会で真相の究明を再三求めているが、バイデン政権は協力する姿勢を見せていない。
世界的に権威が高い英医学誌「ランセット」傘下の新型コロナの発生源究明に関する委員会(ランセット委員会)も、
今年9月「NIHは自らが支援する新型コロナに関連する研究内容の開示に消極的なため、
新型コロナウイルスの発生に関与した米国の研究所が存在したかどうか確認できない状況が続いている」と批判。
ランセット委員会は「新型コロナの発生に米国の研究所が関与した可能性は排除できない」との見解を示した。
その矢先の10月14日、ボストン大学の研究チームは、
「機能獲得実験を行い、パンデミック初期に流行した武漢型に、
現在主流のオミクロン型のスパイクタンパク質を融合させた新たな変異型を作成した」とする論文を、
査読前論文のデータベース(bioRxiv)に公開した。
研究チームによれば、新たな変異型の感染力はオミクロン型の5倍。
オミクロン型では1匹も死ななかったマウスの集団に感染させたところ、その80%が死亡したという。
英デイリー・メールが10月17日「致死率が高い新型コロナの変異型が実験室で開発された。
多くの研究者は『この研究は危険であり禁止すべきだ』と非難している」と報じると、
ボストン大学は「感染させたマウスの集団は武漢型では100%死亡しており、
新たな変異型の致死率はそれほど高くない。実験もバイオセーフティレベルが高い施設で行われた」として、
「記事の内容は虚偽だ」と反論。
致死率の評価は定かではないが、問題なのはNIHの資金で機能獲得実験が行われたのにもかかわらず、
ボストン大学の研究チームが連邦法で定めた国立アレルギー感染症研究所による安全性についての審査を、
事前に受けていなかったことだ。
ウイルスの機能獲得実験(感染力などを高める)は世界中の研究所で実施されているが、
その実態はブラックボックスだ。
何かが動いて、何かがあって、何かを隠している。
当事者しか知ることのできない、闇が存在する。