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​国立大学法人法の改正案審議入り。

「学長の上に立つ最高意思決定機関が設置される。まさに大学の自治を脅かすことになる」

大規模な国立大学法人に学長と3人以上の委員でつくる「運営方針会議」の設置を義務づけ、

中期計画や予算・決算を決定する権限を与えることなどを盛りこんだ国立大学法人法の改正案が、国会で審議入り。

国立大学法人のうち、学生や教職員の数、収入・支出の額などが特に大きい法人を「特定国立大学法人」に指定し「運営方針会議」の設置を義務づけるとしている。

「運営方針会議」は学長のほか、3人以上の委員で構成され、中期計画や予算・決算を決定し、その内容に基づいて運営が行われていない場合は学長に改善を求めることができるとしている。

一方、改正案には、東京工業大学東京医科歯科大学を統合して、来年10月1日に「東京科学大学」を発足させることも盛り込まれた。



政府は世界トップレベルの研究成果が期待される大学を「国際卓越研究大学」として認定し、来年度から10兆円規模の基金を活用して重点的に支援する。

臨時国会で審議入りした国立大学法人法改正案に、大学関係者から強い反対の声が上がっている。

改正案が成立すると、一定規模以上の国立大の上に「運営方針会議」が設置され、

政府や財界の意向による大学支配が可能となり、大学自治が脅かされる恐れがある。

14日、衆院第2議員会館で開かれた「火を消し止めるなら今だ!」と題した緊急院内集会が開かれた。



当面は国立大の話だが、大学関係者でつくる主催団体「大学フォーラム」の黒田兼一明治大名誉教授は、

「私立大にもいずれ影響が及ぶのでは」と先を危ぶむ。

経営効率化を求めた2004年の国立大学法人化以降、人件費や研究費に充てられる「運営費交付金」は削られ続け、
大学は「競争的資金」と呼ばれる外部の研究予算の獲得に追われてきた。

「この傾向が続けば、私立大も国際卓越研究大学を志向するようになる。日本中の大学に政府が首を突っ込む事態になりかねない」と危惧する。

指宿昭一弁護士は「大学の自治が侵されれば、軍国主義がはびこる」と警鐘を鳴らし、

大学や学者への思想弾圧が行われた戦前の滝川事件、天皇機関説事件を引き合いに、

「同じ政治社会状況だ。侵略戦争に突入した点を忘れてはいけない」と訴えた。

仙台市から訪れた東北大文学部4年の山下森人さん(22)は、

「文系学部は立場が弱く、受講を望んでいた講義が予算の関係で廃止になった。大学の自治が崩壊すれば、学生の不利益に直結する」と話した。



計画には知的財産収入やベンチャー企業の増加といった目標も掲げられ、京都大の駒込武教授(教育史)は、

「自分で資金調達せよという『稼げる大学』づくりの一環」と断じる。

不安定なファンドの運用益を使う仕組みや、トップ級の大学に集中投下する手法にも批判が上がる。

北海道大の光本滋准教授(高等教育論)は「本来は大学の層を厚くし、底上げして切磋琢磨せっさたくまする環境が望ましいが、

むしろ大学間格差を広げる方向だ。重点分野でないとみなされた研究者は、入れ替えさせられる恐れもある」と懸念する。

国立大を法人化する法律制定から今年で20年。この間、日本の研究力低下が指摘されてきた。

同省科学技術・学術政策研究所によると、引用数が上位10%と同1%に入る論文数(3年平均)の世界ランクで日本は04年にはいずれも4位だったが、20年にはそれぞれ13位と12位になった。

東京芸術大は2月、電気代の高騰による経費削減を進めた結果、音楽学部の古くなったピアノ5台を撤去。

金沢大は10月、キャンパス内のトイレ改修を目的に寄付を募る、異例のクラウドファンディングを始めた。

駒込教授は「国はいま『国立大は社会に開け』と言っている。学生や研究者を見捨てておいて、社会に開けとは何事だ」と憤る。



日本学術会議の任命拒否問題と重ね合わせ、運営方針会議によって大学を支配し、政府や財界に役立つ存在に変える狙いは顕著とみる。

「大学は『稼げる研究』を目指し、批判のある軍事の領域にも手を伸ばす。それを拒めば、経営改革の本気度を問われることになる」と懸念を訴える。

また、「大発見には試行錯誤が大切だ。時期を限られた研究からブレークスルーは生まれない。

大学は企業の下請けに過ぎなくなる。大学間競争が激しくなれば、共同研究で成果を上げることも困難だ。研究力の向上とは真逆の方向にある」と警告。