今年8月、福岡市・天神の真珠販売店で女(30)がカッターナイフを店員に向けて現金を脅し取ろうとした。
恐喝未遂と建造物侵入の罪に問われ、福岡地裁は21日、懲役1年2月、執行猶予3年、
(求刑懲役1年2月)の判決を言い渡した。
新型コロナの影響で解雇され、路上生活を経ての犯行。
判決によると、被告は8月20日昼、店員の女性にカッターナイフを向け、
「お金を出してください、切りますよ」と脅迫。
加藤貴裁判官は「被害者に相当の恐怖心を与えた」と指摘する一方、
犯行直後に自首したことなどを踏まえ、執行猶予とした。
家族とはほぼ絶縁状態。父親の顔は知らない。
「辞めてもらえないか」。2月、勤務先のうどん店の店長に告げられた。
家賃が払えなくなり、相談相手もいないまま孤立を深め、夜逃げ同然で久留米市のアパートを出た。
福岡市に向かった。
中央区の警固公園や周辺で寝泊まりし、紙に「食べ物をください」と書いて路上に立つ日々。
現金を差し入れてもらったときにはネットカフェで休んだ。
居候をさせてくれた女性もいた。善意が染みた。
被告は福祉に頼ってはいけないと思い込んでいた。「私は健康だし、恥ずかしい」
だが数カ月で限界がきた。所持金257円。
「私もおいしいものを食べて、新しい洋服も買いたい」。
カッターナイフを握った。
高級感があり、店員が1人の店に狙いをつけた。
ためらい、ためらい、3度目の入店で声を発した。
未遂に終わると交番に駆け込み、一部始終を話し、逮捕された。
公判で被告は店や被害者に謝罪した上で、「普通の生活がしたい」と打ち明けた。
新型コロナに関する解雇や雇い止めは非正規社員を中心に6万人を超す。
住まいを失うケースの増加も懸念される。自殺者は増加傾向にあり、30代以下の女性が目立つ。
今後は一時的に宿泊場所や食事が提供される法務省の「更生緊急保護」制度で生活再建を目指すという。
「自分で何でもできる人ばかりではないから、さまざまな支援制度がある。相談することを考えてください」。
判決言い渡し後、裁判官の説諭にうなずいた被告。また、仕事をしたいと願った。
(森亮輔)
‘@新型コロナは弱い立場の人ほど追い込んでいく。
それでなくても、弱い人間は切り捨てる政策をとる日本。
菅総理の「仕事をする内閣」の手腕が問われる。
「国民の命を守る」が、単なるお題目ではなく、実践をしなくてはいけない。