世界の「ワクチン格差」
日本はいまだワクチン接種は始まっていないどころか、いつ入荷するのかも未定。
これまでにアメリカやイギリスの製薬会社などが異例のスピードでワクチンを開発し、
先進国を中心に接種が始まっているが、WHOによると、
今月上旬の段階ですでに接種が始まった、あるいは、まもなく始まる見通しだという国は、
いずれも高所得国や中所得国で、経済的に豊かではない低所得国は含まれていない。
背景には、先進国が多くのワクチンを確保していることがあり、
国際的なNGO「オックスファム」などの調査によると、
カナダのように人口の5倍の数のワクチンを確保した先進国がある一方で、
途上国を中心に67の国では、ことし中に接種を受けることができるのは10人に1人にとどまる見通しだという。
人口に対して1回でも接種を受けた人の割合が多いのはイスラエルで33.9%、
アラブ首長国連邦で27.9%などとなっている一方、感染拡大が深刻なイギリスは11.6%、
アメリカは6.5%にとどまっている。
感染拡大を抑える手段として期待されるワクチンは、先進国を中心に確保が進み、
アメリカは最大で26億回分以上、EUは最大23億回分以上のワクチンを確保したと発表。
多くの途上国がワクチンの確保に苦しむ中、供給国として存在感を高めているのが、インド。
インドは国内でのワクチン製造が盛んで、インド政府によると、
ポリオやはしかなど世界で流通するワクチンの6割がインド国内で製造される「ワクチン大国」なのだ。
新型コロナウイルスについても世界最大と言われるワクチン製造能力を持つ、
大手製薬会社、「セラム・インスティチュート・オブ・インディア」がアストラゼネカと契約し、
アストラゼネカなどが開発したワクチンをインド国内で製造している。
「セラム・インスティチュート・オブ・インディア」だけで、ことし、10億回分のワクチンを製造する計画で、
インド政府は、他の国内の製薬会社の分も合わせ自国民に必要な量を確保したうえで、
今月20日から南アジアやインド洋など周辺の国々に無償で提供し始めている。
これまでに提供されたワクチンは、9か国で550万回分に上り、
今後、中東やカリブ海の国々にも無償で提供するとしており、「ワクチン大国」インドの存在感が高まっている。
国連は、各国に対して、ワクチンの公平な分配のための枠組みへの支援を呼びかけていて、
「ワクチン格差」を是正し、世界全体に公平に行き渡るようにすることが、
パンデミックを終わらせるための新たな課題となっている。