ビル・フアン氏は26日、200億ドル(約2兆2000億円)余り相当の株式処分を、
複数の金融機関から迫られた。
極めて大量のブロック取引が慌ただしく行われた前代未聞の事態だ。
ゴールドマンは26日遅くの顧客宛て電子メールで、
同行が実際にブロック取引で株式を売却した1つだと明かし、
計105億ドル(約1兆1500億円)相当の取引を詳細した。
フアン氏やアルケゴスの名前はメールで触れられていなかった。
ゴールドマンとモルガン・スタンレー 、クレディ・スイスの担当者はコメントを控えている。
フアン氏やアルケゴスも取材を拒んでいる。
著名投資家ジュリアン・ロバートソン氏のタイガー・マネジメントで働いた経歴のあるファン氏は、
自身のヘッジファンドを閉鎖した後、ファミリーオフィスとして「アルケゴス」を設立。
同氏は自己資金の数倍の資金を借りて、非常に大きくレバレッジを効かせる形で、
ロング・ショート戦略を採用していた。
ゴールドマン・サックス・グループは2018年後半までは、元ヘッジファンドマネジャーで、
インサイダー取引で有罪を認めた経歴のあるフアン氏との取引は危険だとして断っていた。
しかし、ゴールドマンは、フアン氏のような大金を賭ける「クジラ」が、
同業者に支払う年間数千万ドルの手数料に魅せられ、同氏の名前を取引注意人物リストから削除し、
主要顧客とすることを認めた。
アルケゴスが多くのヘッジファンドよりも規模の大きいファミリーオフィスとして、
力を持つようになったこともある。
モルガン・スタンレーやクレディ・スイス・グループなどと同様、ゴールドマンもフアン氏に、
数十億ドルの与信を行い、中国の百度(バイドゥ)や米メディア企業のバイアコムCBSなど、
株式への大きくレバレッジを効かせた賭けを可能にした。
ゴールドマンは、フアン氏の取引金融機関に加わり、その投資が先週、息をのむスピードで崩壊した。
ゴールドマンだけではなかった。こうした投資が裏目に出たことから、
フアン氏のプライムブローカーは証拠金融資の裏付けとして多くの担保を要求。
26日午前までには、一部銀行がフアン氏のデフォルト(債務不履行)を宣言する権利を行使し始め、
資本回収のため同氏のポジションの清算に動いたことから、
他社もすぐに続いたと複数の関係者は語った。
それでも、米株式市場全体は揺ぎ無く上昇している。
野村ホールディングスは29日、米顧客との取引に関連して、
約20億ドル(約2200億円)の損失が生じる可能性があると発表。