年4兆円売る投資商品。
金融機関が富裕層や退職世代をターゲットに売り込みをかける。
「元本割れ損失」も。
金融庁は5月27日、「資産運用業高度化プログレスレポート」を公表。
資産運用を手掛ける金融機関が「顧客の利益」を最優先しているかどうかを分析し、課題を示すものだ。
業界向け文書だが、個人投資家もどの金融商品に問題があるのかなどを知ることができる。
今年で3回目のレポートは、ESG(環境・社会・企業統治)」をテーマとする投信の問題点を中心にすえた。
だが、取り上げた問題はほかにもある。
その一つが「仕組み債」だ。
『仕組み債』は、債券に特別な「仕組み」を組み込む商品で、通常の債券より金利が高い。
銀行・証券の販売額は16年の3.8兆円から20年には4.3兆円に増え、特に地銀は2.2倍と大きく伸びている。
買い手は富裕層や退職金などまとまった資金ができた退職世代が中心という。
仕組み債には、スワップやオプションなど複雑なデリバティブ(金融派生商品)を使う。
高い利回りをうたって地方銀行などが販売に力を入れている「仕組み債」では、
購入者が見えない形で年率10%程度のコストを負担している。そんな調査結果を金融庁がまとめた。
コストは、実質的な手数料などで、大半は金融機関側のもうけになっているとみられる。
大きな損失が出ているものもあり、金融庁が注意を呼びかけている。
仕組み債は株価などの指標に基づき、償還までは高い利息が得られるとうたっているが、
指標が決められた水準を上回ると「早期償還」になり、満期までの利息が得られなくなる。
一方で、指標が水準を下回ると、元本を大きく失うリスクもある。
金融庁は今回、主要な仕組み債の一つであるEB債(他社株転換可能債)のうち、
2019年4月に複数の大手証券が販売した364本について聞き取り調査や公開情報から分析し、
調査結果を27日に公表。
大損してトラブルになった事例として、金融商品あっせん相談センター(FINMAC)の、
四半期毎に公表されている紛争解決手続事例の一部には、
毎回のように「仕組み債」でのトラブルが掲載されている。
2020年1-3月の紛争事例の仕組み債事例では、
40歳代後半の女性、詳しい説明を行うことなく難解な仕組み債を勧誘され購入、
多額の損害が発生し損害金2,896万円の賠償を求める。
50歳代後半の男性、証券知識がなく理解力が劣るにも関わらず複数の仕組み債を勧誘され購入、
発生した損害金7,102万円の賠償を求める。
こういった事例の中には、「説明不足」という言葉がよく出てくる。
これだけ大きな金額の話なのになぜ説明不足になるのか?
仕組みが難しすぎて説明されても理解できない。
結局は、銀行さんや大手証券が進めるのだから、そんなに悪いものでは無いだろうと、
欲もあり、購入を押し切られてしまう。
仕組み債は原則途中換金ができない。
シニア世代は病気などで、いつお金が必要になるか分からない。
そういった意味でも、シニア世代が仕組み債に投資する必要性は少ないと見るべきだろう。
相変わらず金融関係はアコギなことをやるものだ。