ロンドン金融市場では最近英国債の利回りが急騰し、通貨ポンドも対ドルでの過去最安値を更新。
通貨取引量と外貨準備高のシェアで世界第4位のポンドと国債が急激な売りを浴びるのは異例。
トラス新政権が矢継ぎ早に打ち出した経済政策が、財政やインフレの悪化につながるとの警戒感を生んでいる。
トラス政権はまず最初に、半年分のエネルギー高騰抑制対策として、
600億ポンド(約9兆3000億円)の資金を投じる計画を発表。
家計や企業の光熱費負担に上限を設け、超える分は政府が肩代わりするという。
さらに予定していた法人税率の19%から25%への引き上げの凍結や国民保険料の引き下げなど。
市場では「財政の収支を合わせられないのではないか」との疑心暗鬼が広がっている。
英国政府は2022年度の国債発行額を624億ポンドを引き上げるとしており、その規模は当初案より5割以上増加する。
物価を抑えるために利上げを続けるイングランド銀行は、
10月から量的緩和策として買い入れてきた国債の売却を開始するとしている。
英国政府の財政の急拡大で悪化する国債の需給状況が、さらに深刻になることが心配されている。
金融市場の動揺は世界にも波及し始めている。
10年物の米国債利回りも9月26日、3.9%を突破、2010年4月以来の高値を付けた。
インフレに悩むドイツでも10年物の国債利回りも急上昇している。
米バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチは9月23日に公表した調査報告書で、
「今年の世界の国債からの流出額が1949年以来、73年ぶりの大きさになる」との見通しを示した。
1949年は日本の終戦4年目、為替レートを1ドル360円に固定した年。
大規模な金融緩和を維持しているのは日本銀行だけになった。
世界の金融市場は大荒れになるのか。