原因は、急増する軍紀違反を罰則の強化で解決する取り組みと、ローテーションを守っていないこと。
戦場で戦うウクライナ人もロシア人も同じ人間なので約1年も続く戦いに疲れてきても不思議ではない。
大義のない戦いに放り込まれたロシア軍兵士は士気が低く、
祖国を守るという大義の下で団結するウクライナ軍兵士は士気が高いというのが定説だが、
実際にはウクライナ軍側も動員した新兵の増加で命令不服従、戦場からの逃亡、上官への暴力行為などが起き、
最高議会は軍人に対する刑事責任を大幅に強化する法案(法律8271号)を昨年末に採択。
この法案が成立すると起訴された軍人は上訴権が剥奪されるため「基本的な人権が守られていない」という批判が集中。
2万5,000人以上の国民が「あまりにも厳しい法案に署名しないでほしいと請願したが、
ゼレンスキー大統領は「軍の戦闘能力を高めてロシア軍に勝利するためには規律を守ることが重要だ」と主張。
1月に同法案に署名。
マーカス曹長は「あのような状況でも我々は動員された兵士の適正を見極めようとしたが、
現在我々の旅団には軍から抜けたいと考える人間が多く、
特に金のためなど誤った動機で入ってきた人間は戦闘のプレッシャーに負けて逃げ出すか命令を無視するようになる。
この問題の殆どは兵士が直面する問題に指揮官が無関心ために発生し、
問題を抱えた兵士達は武器の不足や不適切な指揮官の命令を動画で訴え解決を試みるが、
このような話を公に晒すことは軍の信用を傷つける」と指摘。
将校は「場合によっては指定された陣地を放棄することが無意味な死から兵士を救う唯一の方法になる。
弾薬の補給や味方の救援が期待できない塹壕の中で数日も不眠不休で座っていれば戦闘力は0だ。
戦闘の疲労とトラウマは精神障害を引き起こし兵士の規律に混乱、怠慢、堕落をもたらす。
これが兵士の戦闘能力と命令服従に大きな影響を及ぼす。
罰則を強化すれば指揮官の不味い命令から逃れる方法を兵士から奪うことになり、
根本的には大軍のロシア軍と戦う負担を前線の兵士に押し付けて約束したローテーションを軍は守っていないのだ」と指摘。
規律にまつわる問題はロシア軍を嘲笑する格好のネタになっているが、実際には同じ問題にウクライナ軍も直面している。
ザクレフスカ兵士は「絶望して完全に疲弊した状況では誰も刑事罰を恐れないので今回の法案は効果がない」と述べている。
生死を前にすれば法は意味をなさない。
規模の大きさから言えば、先に潰れるのはウクライナ兵士の方かもしれない。