ウクライナ軍の反転攻勢に備えて、ロシアは強固な要塞化でウクライナ東部と南部の占領地域を死守する構えだが、
ロシアの独立系メディアの分析によれば、ロシアの防衛線が頼りにならないことは既に実証されているという。
それを示したのは、ウクライナと国境を接するロシア西部ベルゴロド州で5月末に起きたロシアの反体制派武装集団による越境攻撃。
今年5月22日には、ウクライナのスーミ地域からロシアの反体制武装集団が国境を越えてベルゴロド州に侵攻。
この侵攻で戦車の進軍を防ぐために設置された、塹壕と「竜の歯」から成る防衛線は役に立たなかったと、
ロシアのメディア「7×7」とベルゴロドのメディア「ペペル」が報じた。
竜の歯とは、先の尖った巨大な歯のような四角錐のコンクリート・ブロックのことだ。
ベルゴロド州は100億ルーブル(約1億2428万5400ドル)を投じてこの防衛線を築いた。
同州のバチェスラフ・グラドコフ知事は今年3月、昨年4月から始まった建設作業がようやく終了し、この地域の防衛は万全になったと宣言。
だが戦況を伝えるソーシャルメディアは、要塞の完成後も越境攻撃が続く状況を伝えている。
ウクライナ内務省の顧問、アントン・ゲラシュチェンコもベルゴルド州知事の、
「防衛は万全」発言をあざ笑うかのように、ロシアの武装集団はやすやすと同州に侵入できたとテレグラムの自身のアカウントに投稿。
「塹壕は浅い溝にすぎず、パルチザンはコンクリートの竜の歯を迂回するだけですんだ」
ロシア軍の短距離防空ミサイルシステム「TOR(トール)」がウクライナ軍を攻撃しようとして自爆してしまったように見える動画が拡散している。
トールはミサイルを発射したものの、ミサイルはすぐにUターンして発射地点近くの地上に着弾。
テレグラムやツイッターなどのソーシャルメディアで盛んにシェアされている。
複数の派生型があるトールは、ロシア軍の移動式防空ミサイルシステムで、今回の紛争を通じてウクライナ軍の標的の1つとなっている。
トールは、低高度から中高度の空域を飛行する敵軍の航空機や無人機、誘導ミサイルおよび精密誘導兵器を撃ち落とすよう設計されている。
オランダに拠点を置くオープンソース防衛情報分析サイトのオリックス(Oryx)によると、ロシアは2022年2月にウクライナ侵攻を開始して以降、36両のトールを失ったという。
この数字は目視で喪失を確認できたもののみで、実際にはもっと多い可能性がある。