政治・経済、疑問に思うこと!

より良い日本へ願いを込めて。

​サンフランシスコの現状。

被害額950ドルまでの窃盗は「軽犯罪」

この20年ほどの間に、もともと高かった不動産価格がさらに高騰している。

50平米ほどの1室アパートでも、家賃は月額50万円を下らない。

小さな家でも買おうとすれば、普通に数億円の買い物になる。

2021年7月に状況が一変。ロサンゼルス近郊にあるファッションディスカウントストア「T.J.マックス」で、

2人組の若者が両手一杯に商品を抱えたまま、白昼堂々と会計をせず、店外に出ていく事件が起きた。

その様子を捉えたビデオがソーシャルメディアで広がり、テレビでも報じられた。

すると、全米規模で模倣犯が続出。

その後、ほかの地域では模倣犯による窃盗は減ったが、サンフランシスコでは、これが2023年夏現在も続いている。



サンフランシスコの中心街にある雑貨店で会計をしていると、そのすぐ後ろを、両手一杯に商品を抱えたホームレスが、会計もせずに店を出ていこうとしていた。

もちろん窃盗だが、店員は諦めた様子で、大声で罵りながら会計作業を続けている。

捕まえる素振りも見せなければ、警察を呼ぶこともしない。友人が「警察を呼ぼうか?」と聞くと、店員は「どうせ警察は来ない」と諦めていたという。

驚くのは、これが珍しい事件現場ではなく、コロナ禍のサンフランシスコにおける“日常”だということ。そこかしこの店で日々、同じようなことが今でも繰り返されている。

勇気ある客が窃盗犯を押さえつけて返品させたケースもあるが、その結果、暴力沙汰、殺傷事件に発展した例もある。

そのため、最近ではほとんどの店員や客、さらには近くを通りかかった警官までもが、そのまま窃盗を見逃しているのだという。

サンフランシスコのあるカリフォルニア州では、2014年に「州法修正案47」が可決。

驚くべきことに、この修正案では、被害額950ドル(約13.5万円)以下の窃盗は「軽犯罪」扱い。

加えて、サンフランシスコの警察不足という問題にも直面している。

不動産価格が高く警察官が住める場所ではないためか、サンフランシスコでは2010年頃から警察官の数が減少しており、問題となっていた。

重犯罪への対応や、観光地や学校行事などに警察官を配備することも多いため、常態化した窃盗に時間を避ける警察官がほとんどいないのだ。


     (フィラデルフィア

今のサンフランシスコにはもっと深刻な問題がある。それは、ドラッグの蔓延。

コロナ禍において「フェンタニル」という500円ほどから買える安価かつ中毒性の高いドラッグが全米で広がった。

このドラッグ中毒がもっとも深刻に広まっているのが、サンフランシスコのテンダーロイン地区。

道のそこかしこに、このドラッグの中毒者が溢れている。

フェンタニルは摂取すると感覚が遮断されてしまうようで、道の真ん中で身体をクネっと曲げた状態で立ったままピクリとも動かない状態の人が、そこかしこにいる。

2023年の最初の3ヶ月間だけで、このフェンタニルの過剰摂取による死者は41%も増加したという。

そんなドラッグ中毒者が溢れる危険な地区にも住宅があり、学校に通う子どもたちもいる。

集英社 林信行 参照・抜粋、編集