現在のがん治療は外科手術や抗がん剤が主流。
ただこれらの方法は、がん細胞に対して行うには効果が限定的。
そこで近年着目されているのが「がん細胞たちに、がんを辞めて普通の細胞に戻ってもらう方法」
人間社会で例えるならば、社会(体)に巣くうマフィア(がん細胞)たちに健全な職場を斡旋し、普通の社会人(普通の細胞)になってもらう方法と言える。
マフィア構成員もがん細胞も同じく「しぶとい」性質があり、無理矢理排除しようとしても上手くいかない。
しかし普通の細胞に戻るという選択肢は、がん細胞も生存を約束され、体も健康を取り戻すことができるため、WIN‐WINの関係を築くことが可能になるという。
コールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)では、がん細胞を「転職」させて普通の細胞に戻す技術について6年間にわたり研究を続けており、
今回、肉腫細胞を筋肉細胞に変化させる試みに挑んだ。
研究ではまず「ある遺伝子を破壊すれば、がん細胞が普通の細胞に戻るはずだ」という仮説を立てた。
これまでの研究によって、がん化は遺伝子の突然変異が原因であることが判明している。
そのため(理論的には)がん化させる変異があるならば、逆にがん化を解除する変異も存在する可能性がある。
そこで研究者たちは横紋筋肉腫細胞(がん細胞)の遺伝子を1つずつ破壊していき、普通の細胞に戻るかどうかを確かめる地道な作業を繰り返した。
すると、肉腫細胞に存在する核転写因子Y(NF-Y)と呼ばれる遺伝子を破壊したところ、肉腫細胞が普通の筋肉細胞に変化することが判明。
また筋肉に変わった肉腫細胞たちは、がんとしての性質を全て失っていることも判明。
NF-Yを無力化することで、危険な肉腫細胞を普通の筋肉細胞に変化させられることを示していう。
ただNF-Yの本来の役割は、遺伝子の活性度を制御する「調節役」にある。
そのため研究ではNF-Yがどんな遺伝子の調節を行っているかが追加で調査した。
再びマフィアで例えるならば、がん細胞(マフィア)は体内でちゃんとした役割を担う分化細胞(職業)についていない状態で、それが無分別な活動につながっていた。
しかし、そんな彼らに成長を促すことで、がん細胞(マフィア)から足を洗って筋肉細胞という新たな役割に変化(転職)させることができたという。
‘@マフィアから足を洗うのは並大抵のことではない。
可能なのだろうか。