「日本学術会議」問題、世界が批判的に報じている。
海外の科学誌や主要紙などが「政治の科学介入」だと強く警鐘を鳴らしている。
イギリスのネイチャー誌は、
「脅威に直面する学術的自律」との小見出しが付いた一節の中で、
学問の自由を保護するという原則を「政治家が押し返そうとしているとの兆候がある」
と強い懸念を示した。
まず、トランプ米大統領による科学軽視などに触れ、
世界の政治情勢に関する記事を増やす考えを表明。
そのうえで、「研究者と政治家がお互いを尊重する信頼」が必要だが、
この信頼が世界各地で「相当な圧力にさらされている」と続け、
具体的な最新事例として紹介したのが菅首相による任命拒否。
対象となった6人については「政府の学術政策に批判的だった」などと説明。
日本学術会議の独立性や、任命拒否が現行制度になった2004年以降初めであることにも触れ、
今回の措置の異例さを示唆した。
アメリカ科学振興協会が発行し、世界で最も権威のある学術雑誌であるサイエンス誌は、
「日本の新首相は日本学術会議との闘争を選んだ」という記事を掲載。
学問の自由の侵害であるという研究者らの主張を取り上げた。
記事では6人の人文・社会科学系の学者がこれまでの慣習を破って任命拒否されたことを伝え、
菅首相が拒否の理由を説明しなかったと指摘。
加えてこの6人が菅首相が官房長官を務めた安倍政権の政策を批判していたという事実を紹介。
日本科学者会議の井原聰事務局長による、任命拒否が「違法」であるという発言にも触れ、
政権を批判した学者を、法を超えて排除しようとする政府の姿勢を懸念した。
イギリスの経済紙「フィナンシャルタイムズ」はこの件を、
「日本学術会議スキャンダルが菅政権の蜜月時代を脅かす」という単独記事で大きく取り上げた。
すでにこの問題を菅政権の最初のスキャンダルと認識しており、
これによって政権開始時の蜜月時代が終わるリスクがあり、
また(パンケーキなどで)ソフトイメージを植え付けようとしていた菅総理の、
「非情な黒幕」という評判が明るみに出るだろうとした。
加えて、世論調査で過半数が任命拒否が間違いだったと回答していること、
6人の学者らが安倍政権時代の安保法制や共謀罪に反対していたことを上げ、
加藤官房長官がこの任命拒否を合法だと言い張っていることにも触れている。
フランスの「ル・モンド」も「日本の首相が知的世界と戦争」という記事を掲載。
「日本の菅新首相は批判的な声がお嫌いのようだ」とし、
日本学術会議が推薦した候補のうち6人が前代未聞の任命拒否にあったことを伝えた。
菅首相がその分野では極めて著名な候補たちを排除するにあたって、
ほんの少しも理由を説明していないことを問題視。
ノーベル賞学者の同会議現会長の任命拒否撤回と、
説明の要請を加藤官房長官が実質的に拒んだことも指摘。
イギリスのロイター通信も「日本の菅政権、学術会議の任命拒否の弁明に非難」と題した。
就任直後に高い支持率を誇っていた菅政権が、
安倍政権の政策を批判した学者らを任命拒否したことで大炎上を引き起こすだろうと予測。
いずれも政治の学問への介入であり学問の自由への脅威であると扱っており、
政権を揺るがすレベルのスキャンダルとして見ている。
プリンストン大やコロンビア大でも、学者が「民主主義を守るべき」と署名をスタートさせたという。
このままだと、さらに日本の評価が低下するのは必至だ。