1983年、「総理の任命は形式的」という政府見解が出され、
総理が任命を拒否したことはこれまで無かった。
今回、初めての任命拒否に対して、実に480の学会が反対声明を出し(10月23日時点)、
学問の自由を保障した憲法23条に反すると猛反発している。
政府は軍事研究の推進を目指しているが、学術会議は軍事研究への協力を拒否する声明を、
1950年、67年、2017年と繰り返し出してきた。
立命館大の松宮孝明教授(刑事法)は、「(菅首相が)どのような公務員でも、自由に選び、
または選ばないことができると宣言したものであり、怖ろしい話です。
ヒトラーでさえ独裁を行うに当たって特別立法を必要としたのに、
菅首相は憲法を読み替えて独裁を進めようとしている」と強調した。
10月23日、任命を拒否された当の研究者達が日本外国特派員協会で会見を開いた。
ラジオ・フランスの特派員は、「もっと強く抗議しないのか? 裁判に訴えないのか?」と聞いた。
早大院の岡田正則教授は、「これは学問と政治の問題であり、是正を求めるもの。
問題の性格上、いきなり裁判ではなく……」と、提訴には消極的発言をした。
『報道特集』(TBS)キャスター金平茂紀氏が、「今後の行動として、提訴は?」と聞くと、
東亜大院の根森健・特任教授は、憲法研究者の立場としては「具体的侵害が(無い)…」と回答。
金平氏「任命を拒否された6人は原告になれるのでは?」と問うと、
「6人は提訴できるかもしれませんが……」、
金平氏「学術会議は?」と、たたみかけたが、「具体的な侵害があるか……」と煮え切らず、
金平氏「学術会議が一番被害を受けているでしょ!」と語気を強くしたが、
5人から言葉は出なかった。
以前、この問題に「多くの国民はピンとこない」と指摘したが、
学術会議自体がピンと来ていないのかもしれない。
日体大の清水雅彦教授(憲法学)は、「任命された99人が就任を拒否する。
私はそれぐらいのことをすべきだと思います」と訴えた。