2018年12月29日、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の地球観測衛星「NOAA-20」に搭載された、
可視赤外撮像機放射計(VIIRS)により、太平洋南西部ナウル島から約400キロ南の上空にある雲で、
観測史上最低のマイナス111.2度が観測された。
雷雲や熱帯低気圧は高度18キロにまで発達して、雲頂が低温になるが、
非常に強力であれば、対流圏を突き抜け、成層圏に達して、さらに冷やされる。
この現象を「オーバーシュート」という。
イギリスの国立地球観測センター(NCEO)の研究チームが、
2021年3月22日に学術雑誌「ジオフィジカル・リサーチ・レターズ」で発表した研究論文では、
「この雲はオーバーシュートして、雲頂が高度20.5キロに達し、
マイナス111.2度という記録的な低温となった」と結論づけている。
このような雲の極低温は近年、より頻繁にみられるようになった。
雲の低温がなぜ頻繁に観測されるようになったのか、現時点で明らかになっていない。
研究論文の筆頭著者で国立地球観測センターのサイモン・プラウド博士は、
「低温の雲による雷雨はより猛烈になりやすく、雹や稲妻、強風によって、
人々に被害をもたらすおそれが高まる」と警鐘を鳴らす。
「これが気候変動によるものなのかどうか、解明する必要がある」としている。