新型コロナ対策のキーマンとして感染防止を呼びかけ続けてきた政府の分科会の尾身茂会長。
尾身会長は、感染者の多くを占め、対策のカギを握る「若い世代」に、
メッセージを届けられていないことに悩んでいた。
3回目の緊急事態宣言も延長され、長期にわたって強い対策を続けることに、
納得が得られにくくなってきている。
「いま、若い世代がどう考えているのか。話が聞きたい」
独特のファッションやことばづかいで、人気を誇るお笑いコンビ「EXIT」のツッコミ、りんたろー。さんと、
尾身さんの対談が“若者の街” 渋谷で実現した。NHK
(以下、尾身…尾身会長 りん…りんたろー。さん)
尾身「若い人に何とかわれわれのメッセージを届けたいという思いでずっとやってきたんだけど、
だいたい失敗で…。若い人を非難するつもりはないんだけど、
気付かないうちに感染の伝ぱに関与してしまっているので、対策をお願いしますと、
かなり丁寧に言ったつもりなんだけど、なかなか難しい。
若い人への伝え方をどうしたらいいのか。りんたろー。さんはどういうふうに思いますか」
りん「1年前はやはりコロナって未知のウイルスで、何なのかよく分からない状態でした。
今は、この1年でいろんなエビデンスが出てきて、
1人ひとりが自分のルールを構築していったわけですよね。
だから緊急事態宣言も、意味を成さないものになってきて、
飲食業が閉まったことによって行き場を失った者たちが街に出て飲んでいる。
もちろんダメなんだけど、報道にも僕はちょっと引っ掛かっています。
『こういう現状があります。どうですか、さあ、たたきなさい』っていうところもちょっと気持ち悪いなと。
『じゃあなぜその人たちが外に出なきゃいけなくなったの?』っていうところまで考えてほしい。
ただ、これまで1年我慢してきた人たちに何かをお願いして、
『ああ分かりました、じゃあ家にいます』って僕はすごく難しい話だと思う」
(‘@多くの人は相変わらず我慢している。ごく一部の人が公園や路上で飲んでいる。
そして、その一部の人が主に感染を拡大させている)
尾身「今はコロナのことが結構分かってきてるから、わざわざステイホームする必要ないっていうことですよね。
じゃなぜ今回、百貨店なんかも閉めるというようなことをしたかって、『ふざけんな』ってなりますよね」。
りん「何で、わざわざ広くて大きい密にならないところを止めて、
行き場を失った人たちが狭い店に集まるっていう、本末転倒のような、
ちゃんと感染対策できてる店は営業していいんだよみたいな、
そこのメリハリがあったらいいんじゃないのかなって思ってしまいますけどね」
尾身「実は、われわれ専門家としてはずいぶん提案しているんですよ。
『感染リスクの高い5つの場面』っていうのがあります。
1「飲酒を伴う懇親会」
2「大人数や長時間に及ぶ飲食」
3「マスクなしでの会話」
4「狭い空間での共同生活」
5「居場所の切り替わり」の5つです。
飲食の場だとか、小さな寮での生活など3密だけじゃなく、かなり前から伝えているつもりだった。
本当は緊急事態宣言出したくない。多くの人は対策をやってくれてるんですよね。
ところが、必ずしも全員がやれていなくて、感染が広がってきてしまう。
デパートなどが開いているとどうしても出たいという気持ちになる。
そこで感染が毎日起きてるわけじゃないのだけど、開いてると行っちゃうから、
行くとその後に飲食とかお酒とかの機会が生まれて感染が広がってしまう。
それがたぶん伝わっていないですね」
(‘@私も同様のことを以前から指摘しているが、これはメディアも良くない。
百貨店に買い物に行ってまっすぐに帰ってくればまだいいが、
せっかく出てきたのだから飲食をしようということになる。その流れの中で感染が広がる。
そこをもう少し理解できるように説明すべきだ。
マスコミも、良いも悪いも飲食の取り上げ方が強過ぎる)
りん「5つの場面、聞いたことがないですね。逆にどういったところで発信されてたんですか?」。
(‘@私も5つは知らなかった。もちろんほとんど認識しているが「5つの場面」としての訴えは知らなかった。
「居場所の切り替わり」は初めて聞いた。)
尾身「記者会見で。若者は、テレビのニュースなんか見ないっていうことですかね」
りん「そうですね。大事なことで1年間言い続けていても、ここまで届いてないって、
何か悲しいというか切ないというか。やっぱり興味深いコンテンツが増えすぎている。
あまりこちらが求めなくても入ってくるものが多いというか、だからかもしれないですね。
でも、これだけニュースでやってても、緊急事態宣言が出てるのか出てないのか知らない子も多いですね」。
尾身「ああ…」
(‘@緊急事態宣言が出ていることを知らない人がいるということは、にわかに信じがたいが、
若干いるのだろう。でも、そういう人には、残念ながら何をやっても届かない。どうしようもない。どうしても%存在する。)
りん「コロナに対する興味が薄れてしまっているっていうのが、現状かなって。
あとは『国民に対する負担が大きくね?』っていう気持ちもある。
『補償は出せません、ごめんなさい。医療体制も整いませんでした』
『じゃあ国民の皆さんごめんなさい』ということのはずですけど、『ちょっと自粛してください』。
それは俺らも飲めないぜ、みたいなスタイルの人もいるかもしれないですね」
尾身「『一体政府は何をしてくれてんだ』っていう思いはたぶんあると思うんです。
それだけのこと頼むんだから、十分な経済的な支援だとか、
私は汗をかいてほしいと、政府に言っているんです。
私たちはこういう仕事をしているんで、政府が何をやっているかも結構知ってるんですよね。
まあ完璧じゃないけど、日々お役人の人、朝から晩まで仕事している。
ただ結果としては、多くの人が、国は十分やってくれてないんじゃないかって感覚がある」
(‘@役人は、政治家から無茶振りされて朝から夜中まで働いているが、政治家が頭が悪く判断できない。
政治家が率先して身を切らず、あげく、自らルールを破る政治家もいるから、信用を失う。
そして、失敗しても謝らない。政治に透明性が無く、国民ばかりに負担の重荷がかかっているから憤る。
一部の若者などは自由に行動する)
りんたろー。さんはYouTubeで「新型コロナ注意喚起漫才」を公開。
りん「あの頃(去年4月ごろ)って、家にいることがかなり正解というか、
それしかできなかった時期だから自信を持って、メッセージの発信ができたんですけど、
いま、逆に芸能人って何が正解かわからない状態で、どこの先頭に立っていいかわからないから、
旗が振れないんですよね。僕も毎日仕事でいろんなところに出ているのにもかかわらず、
『じゃあ、皆さんステイホームしましょうね』って、それはちょっと無理な話で、
自信をもって発信できないていうのがあるかもしれないですね」
(‘@仕事と遊びは違うので、そこは割り切って堂々と発信してほしい。)
尾身「ワクチンはいずれ順番来ますけど、打ちに行きますか」
りん「はい。僕なんかはやっぱり迷惑かける人も多いんで、速攻で2発打って(笑)それを発信したいですね」。
尾身「若い人も打とうなんてことを言ってくれると、りんたろー。さんは影響力があるから、
みんなやってくれるんですかね」。
りん「どうか分かんないですけど、僕は発信したいですね。副反応がどうの、みたいなのがありますけど、
どんなワクチンでも起こり得ることじゃないですか」
りん「あとはちょっとオリンピックも気になってきますよね。オリンピックは開催されて、
それでまた人が外に出てとか考えちゃうんですけど、どうですかね」。
尾身「オリンピックの開催は、国やIOCが決めるけど、
普通に考えれば、ああいう機会が来ると人が増えるから、
少し抑え目にしたほうがいいっていうのは間違いない。
1つ考えていただきたいのは会場の外ですね。オリンピックの間、
スタジアムの外とか一般の人たちがどう動くかということがものすごく重要で、
しっかりと決めてほしいと思いますね」
りん「競技場とかの中よりも、それに付属する人流のところが不安ってことですね」。
尾身「オリンピックを契機にした人の動きね。分かってきたことは、恒例行事。
冬休みとかゴールデンウイークとかになると人の動きが盛んになって、
感染が増えていくことは証明済みなんです。
だから今回も、スタジアムの中というよりも外の人の流れをどうコントロールするか。
選手の問題ではない」