井上 陽子(デンマーク在住ジャーナリスト)
意訳。
デンマークは感染者数が高い水準にある中、2月1日にコロナの規制を全て撤廃した。
この決断が、世界的にも注目を集めている。
というのは、デンマーク政府が、新型コロナの感染者数が相当高い水準にあるさなかで、
規制撤廃の決断をしたためだ。
さらに、デンマーク国内の急速な感染拡大が、オミクロンの中でもより感染力の強い、
「ステルスオミクロン(BA.2)」という亜種の広がりによって起きているためである。
今年1月には、ロックダウンをした昨年の冬の10倍以上の水準に達し、
2月1日の段階でも、1日の新規感染者数が4万5000人超となっている。
これは、日本の人口に換算すると、1日の新規感染者数が100万人近い感覚だ。
デンマークの1日の新規感染者数の推移は、昨年の冬と比べても10倍以上となっている。
デンマークは検査数の多さとともに、ゲノム解析にも優れていることで知られる。
デンマークでは昨年の春から、「コロナパス」というデジタルのツールを使い、
検査で陰性の人とワクチン接種済みの人とで社会活動を再開する、という方針を取ってきた。
大量の検査をさばくための大規模な検査態勢を敷いている。
デンマークではいま、新型コロナ感染の99%以上がオミクロン株だ。
ゲノム解析を行っているデンマーク国立血清学研究所(SSI)は、BA.2の特徴として、
BA.1よりも約33%感染しやすいという研究結果(未査読)を示している。
また、ワクチン接種済みの人に対する感染リスクも、BA.1よりも高いとしている。
一方でBA.2は、ワクチン接種をしている人に対しては、BA.1と同じように、症状が軽症で済む。
これを受けて、デンマーク政府は、新型コロナを「社会的に重大な病気ではない」という位置付けて、
規制を解除した。
デンマーク政府は、12月にオミクロンを初めて検知して以来、3回目のブースター接種を加速させてきた。
2回目の接種から4ヶ月半後に接種の案内が届く仕組みになっているが、
それ以外でも薬局などで予約なしで打てるようになり、「1にも2にもワクチン接種」だった。
その結果、現在では65歳以上の94%がワクチンの3回目接種済みとなり、
人口全体でも6割以上が3回目接種を終えている。
ワクチン接種を積極的に進めたことに加えて、これまでの感染で免疫がついた人も増えいると考えている。
社会全般として高い免疫を獲得したことになる。
新型コロナを「社会的に重大な病気ではない」という位置づけに変えたのは、
今後さらに感染者が増えたとしても、医療を逼迫するような社会的な脅威にはならない、
とデータで裏付けられた上での判断だった。
規制をすべて撤廃したといっても、特にコロナ感染により重症化しやすい人を守るため、
病院や高齢者施設などでは引き続きマスクやコロナパスを使うことになっている。
大人数で集まる場合には事前に抗原検査で陰性を確認することなど、
感染を広げないための一般的な対策は、自主的に続けていくことになる。
これまで、必要な時にワクチンが不足したり、
自宅用の抗原検査やマスクが不足するような事態にならずに済んでいるのも、
政府が経済界などと連携しながら先手を打っているためと見られ、不安解消につながっている。
デンマーク政府は、これから先何が起きるかの見通しを伝え、
それに対して対策を取っていることを国民に示すのがうまい。
やみくもに社会を通常化するだけでは不安が募るところだが、ワクチンの3回目接種を相当進めて、
社会全体としてオミクロンで重症化しにくい免疫を作った上で、
規制撤廃が重症患者の増加にはつながらないという科学的な根拠を示していることが、
国民の納得感につながっている。
日本の人口規模に換算して「1日100万人が新規感染」の肌感覚がどんなものかというと、
すでに自分や家族が感染したか、相当数の知り合いが感染している状況である。
早い話が受け入れるしかないということも言える。受け入れて共存していくしかない。
デンマークの規制解除は2回目だ。2回目ということは、3回目もあるかも知れない。
デンマークの新型コロナ感染状況は要注目だ。
デンマークの人口は580万人弱、死者数は3790人(6.5%)が報告されている。
日本で言えば82万人くらいだろうか。
これをどう受け止めるのか。成功しているといえるのか。
表面だけでは計り知れない国の対応。
新型コロナは本当に恐ろしいウイルスだ。
多くの人が本当に理解していないようだが、
日本では風邪もインフルエンザも流行していない。
その中で新型コロナが猛威を振るっている。
新型コロナは本当に恐ろしいウイルスだ。