ウクライナ元将校「プーチン敗北を認めざるを得ない」
ウクライナの元参謀本部将校オレグ・ジダーノフ氏は、
ウクライナ東部の戦況、プーチン政権内部の変動等について、
ウクライナの独立系インターネットテレビ「ポリティカ・オンライン」(4月30日)でインタビューに答えた。
ジダーノフ氏は、旧ソ連軍時代の同僚がロシア国内の各地にいることから、ロシア軍の情報にも詳しい。
ジダーノフ氏は、「『対独戦勝記念日』である5月9日を前に、
プーチン大統領は敗北を認めざるを得ないだろう」と分析。
ロシアの田舎では、ウクライナでの「特別軍事行動」は遠い出来事だと受け止められてきた。
しかし地方では問題が発覚してきている。
シベリアのブリヤートにある大きなスポーツ施設が葬儀所になっていて、供花が撤去される間もなく、
兵士の棺桶が次から次に運ばれてきている。
兵士の遺体がようやく家族の元に届けられるようになってきているのだ。
私の得た情報によれば、ポーランドとの国境付近の飛び地、カリーニングラードに、
昨日(4月29日)11体の遺体と34人の傷病兵が着いた。負傷兵のほとんどが手足を失っている。
負傷兵たちも徐々に戦場での本当の出来事を語り始めるだろう。
戦況は、シーソーゲームだ。敵が攻めてくればわれわれは引き、敵が引けばわれわれが攻める。
いずれにせよ、ウクライナ軍が有利だ。防御戦だからだ。
損耗はロシア軍の方が大きく、兵力もギリギリだ。
我々は防御しながら敵に陽動作戦を仕掛けている。
我々は多少でも戦闘能力の向上を図ることが可能だが、
ロシア側は、この攻撃のためにかき集めた戦力も底をつきつつある。
あと7日から10日はまだ戦闘可能だが、その後は再度補充が必要となる。
得てして軍人ではなく政治家が戦争を指導するとロクな結果にならない。
現状を見る限り、命令はすべてプーチンが下している。
戦場の論理と思想によってではなく、プーチンの政治的判断だ。
つまり、どんな犠牲を払おうとも5月9日をめざせ、ということだ。
だからこそウクライナ軍には有利な情勢なのだ。
5月9日の前夜だ。
5月7日か8日、軍の指導部が来て、「われわれは課題を遂行できなかった」という報告を受ける時だ。
その後、プーチンがどうするのか、わたしにはわからない。
これはロシアの内政の決定的な転換点となるだろう。軍事パレードを中止するのかどうか。
今回ロシアのいくつかの町ではウクライナで戦死した兵士の遺影を、
その家族が胸に抱いて行進することになっている。
ベラルーシのルカシェンコ大統領もパレードには行かないようだが
ルカシェンコは先日、ポーランドとの国境に軍を配備した。
5月1日から始まるポーランドの演習に備えるためだというが、
これによって、ルカシェンコはウクライナと戦う意思はないことを示したのだ。
ルカシェンコは、身の安全さえ保証されれば、西側との協力も惜しまない姿勢だ。
ロシアというタイタニックは沈没しかけている。
ベラルーシは中国との関係が深いので、西側よりも、中国を頼りにする可能性はある。
軍事部門を含めた共同計画も多い。
トランスニストリア(沿ドニエストル)はNATOから厳しい警告を受けた。
米軍の戦術部隊がいざという時に備えてルーマニア・モルドバ国境に投入された。
もちろんNATOはこの戦争とは距離を置く姿勢を変えていない。
現状ではトランスニストリア地方のロシア軍は全モルドバ軍よりも強力だ。
だが、大事なことは、ついにモルドバがロシアに対する制裁に加わったことだ。
ルーマニアもモルドバへの財政支援を決めた。
戦争というものは、軍改革には最高の時間で、この戦争によってウクライナ軍は、
旧ソ連の軍事体系から離れて、全面的に西側の軍備とシステムに移行することができる。
この8年、われわれはNATO標準への移行を議論してきたが、ようやく実戦で移行できるようになった。
この戦争によってウクライナ軍はまったく別の、西側的な軍隊に生まれ変わった。
これまではロシア領内に届く長距離砲がなかったが、西側の援助で手に入れば、
われわれもロシア領内の武器庫や輸送線を叩くことができるようになる。
これは大きな利点だ。ロシア側にも空襲警報が鳴り響く。
5月9日にはプーチンは何らかの「勝利」を宣言しなければならないが、
それは「新たな戦争」宣言ではないはずだ。
それはロシア国民の失望につながるだけだ。ロシア全土での総動員令はありえない。