夏の参院選が迫る中、立憲民主、国民民主両党への支援に力が入らず、
むしろ自民党への接近が目立つ。
約700万人を擁する労働組合のナショナルセンターは、どこに向かうのか。
「連合並びに友好的な労働組合との政策懇談を積極的に進める」
3月13日の自民党大会。決定した2022年運動方針に「連合」の2文字が記された。
3日後の16日、東京都内のホテルの料理店で麻生太郎・自民副総裁と、
日本労働組合総連合会(連合)の芳野友子会長が向き合う。
自民労政局長を務める側近の森英介元法相から、
「芳野氏は日本酒好き」と聞いた麻生氏が呼びかけた会食だったという。
自民党は連合への接近を通じ、夏の参院選で野党陣営を切り崩す狙いを隠さない。
だが、その前のめりな姿勢に波紋も広がる。
自民と連立を組む公明党の関係者は、
「公明嫌いの麻生さんが、公明を揺さぶるために国民民主や連合に接近している」と警戒感を示した。
麻生氏と距離がある菅氏の側近議員からは「麻生氏は公明に対する配慮が足りない」との声も漏れる。
連合加盟の労組「全国コミュニティ・ユニオン連合会」(全国ユニオン)の鈴木剛会長は、
「麻生氏が自民内部の権力闘争の過程の中で連合に手を突っ込んできた。
麻生氏は『古典的な利益団体への調整で仕掛けてくる』と分析した上で、
そういう構図に連合が無方針にからめ捕られているのは問題だ」と指摘。
連合会長代行の松浦昭彦氏(UAゼンセン出身)、川本淳氏(自治労出身)が、
「参院選まで自民党幹部との食事は控えてください」と、
芳野氏と清水秀行事務局長(日教組出身)に苦言を呈した。
2月に芳野氏らが自民の小渕優子組織運動本部長らと会食した際にも両会長代行は自重を促したばかり。
その後も清水氏らは自民党の二階俊博元幹事長と芳野氏の食事を計画したが、
さすがに連合内の反対で実現しなかった。
芳野氏の「自民シフト」に不満を持つ連合関係者は、
「誰もが初の女性会長を引きずり下ろす悪者になりたくない」と指摘したうえで、
「芳野氏はそれが分かっていて、好き勝手にやっている」と批判する。
連合は政権交代可能な政治体制と「非自民、反共産勢力の結集」を掲げ、
細川護熙政権誕生(93年)や旧民主党への政権交代(2009年)に大きな役割を果たしてきた。
だが、かつての栄光は消え去ろうとしている。