ロシア軍がウクライナの占領地で農家から大量の農業機械や穀物を略奪していると、
複数の関係者がCNNに語った。
特にウクライナ南部のヘルソンやザポリージャなどの穀倉地帯では、
ロシア軍が統制を強め、略奪を加速させていると関係者は訴える。
そうした地域では種まきの中断や中止を余儀なくされた農家も多く、
世界有数の穀物生産国ウクライナで、今年の収穫が脅かされている。
ウクライナのミコラ・ソルスキー農相は、過去2週間の間に農家からの略奪が急増したと指摘。
ロシア軍の侵攻が始まる前日の時点で、600万トンの小麦と1500万トンのトウモロコシが、
ウクライナから輸出できる状態にあり、その大半が南部で保管されていた。
ウクライナ国防省は5日、これまでに推定40万トンの穀物が盗まれたと発表。
ヘルソン州やザポリージャ州の農家などは、具体的な略奪の状況を証言している。
ヘルソン州のマラ・レペチカ村では4月下旬、ロシア兵が1500トンの穀物を、
クリミア半島のナンバープレートが付いたトラックで貯蔵庫から持ち去ったという。
翌日には同じトラック(全部で35台)が戻って来て、
ドニエプル川の対岸にあるノボラジスクの大型穀物貯蔵施設を空にして行った。
略奪されなかった穀物倉庫はほとんどが破壊された。
ウクライナ当局者によれば、占領軍は農家などに対し、窃盗について警察に通報すれば、
家族の身に危険が及ぶと脅しているという。
農業専門家によると、中東諸国はロシアから進んで小麦を輸入しており、
小麦は今年に入って急激に値上がりしているなか、20%の値引きも受けているという。
小麦の出所をたどるのは難しく、輸送は簡単にできる。
ウクライナには1930年代、農民が貯蔵していた食糧をスターリンが収奪し、
数百万人が餓死した歴史がある。
ウクライナ人の多くは「ホロドモール」と呼ばれるこの大飢饉をホロコーストとみなしている。
ルハンスク州の当局者は、ロシアはホロドモールの再来を狙っているとの見方を示す。
「次の収穫ができなければ、飢餓の影響が深刻化しかねない」とメリトポリ市長は危機感を強めている。
ルハンスク州の当局者によると、同地でこの春の種まきは行われていない。
別の当局者によれば、ロシア軍はヘルソンで収穫量の70%を無条件で引き渡すことを条件として,
農家の種まきを認めたが、ほとんどの農家は拒んでいるという。