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統一教会の野望を40年前に見抜いていた「フレイザー報告書」

ついに山際大臣の更迭に踏み切った岸田内閣だが、旧統一教会問題の実態解明にむけてはまだまだ及び腰。

これとは対照的なのがアメリカ。今から40年以上も前に政治と旧統一教会の関係が問題となったが、

強い危機意識を持った連邦議会によって驚くほど精密な調査が行われていた。

自民党によれば、統一教会と何らかの接点を持っていた議員は党内379人中179人にものぼる。



本来ならば、カルト教団が与党自民党にいかに影響力を行使し、国政に干渉することがあったのかどうか、

そして公正な民主主義が脅かされることはなかったのかなどにつき、きちんとした調査が必要なはずだ。

だが、この期に及んで自民党は「点検」という小手先の調査でお茶を濁そうとしているように見える。

車の車検じゃあるまいし、部品の交換で済む話ではないだろう。

同じ「点検」でもアメリカの行った「点検」はMRIを使ったような精密検査だった。

ことの発端は韓国の朴正熙(パク・チョンヒ)政権がKCIA(朴政権時の中央情報機関)や実業家を使って、

不正に米国の内政・外交に影響力を及ぼしているのではないかという疑い、

いわゆる「コリアゲート疑惑」(1976年)が浮上したことだった。 


その工作の重要な「実働部隊」となったのが、文鮮明率いる統一教会の関連組織だったのだ。

「コリアゲート疑惑」の「点検」を担ったのは米下院の国際組織小委員会だった。

民主党フレイザー議員が委員長を務めたことから、「フレイザー委員会」とも呼ばれる。

その「フレイザー委員会」が1977年から1年半にわたり、11カ国、1563回の聞き取り、

123回の召喚状、20回の聴聞会、37人の証言記録をもとに作成したのが「フレイザー報告」。

その量は膨大でじつに447ページにも及んだ。



これを読んで驚くのは、文鮮明が作った統一教会関連組織の本質を見事に見抜き、

米国の政治機関が強い危機意識を持って対処したことが余すことなく記述されていることだ。

フレイザー報告書」は当時の統一教会KCIAの方針で勢力を拡大し、

海外の政治工作の手段として使われたと指摘。

それまで米国内で「田舎のセックス教団」扱いされていた統一教会が、

70年代になってKCAIが運営する国際的組織へと変貌したと分析。

1966年8月26日ソウル発の米国大使館極秘電報を公開し、そこに教団の実態を報告している。

教祖の性癖だけでなく、統一教会の政治活動の特徴についても教祖の文鮮明の発言を引用し、的確に分析。

「われわれが全力疾走できないひとつの要因は、勝共イデオロギーに基づいて、

われわれの運動を教会として宣言できないことにある。

我々の哲学、統一思想が神学教義に基づいていることを人々に理解させる必要がある。

でなければ、勝共運動を教会運動につなげられない」(339ページ)


「何事も政治的な表現で語ってはならない。

『政治には関心がない。われわれは政治のためでなく、人道的動機でやっているのです』と説明しなければならない」

免税団体が政治活動を制限されていることを十分に認識してか、文鮮明の機関のスポークスマンは、

政治活動を宗教的用語で説明することが多い。



統一教会関係者がしばしば政治性の強い、生々しい内容を宗教的メタファー(暗喩)として語ることが多いのは、

政治的表現を使うことのリスクを教祖自身が把握していたからだと報告書は見る。

元信者の証言をもとにこうダメ押しをしている。

「(統一教会は)教会などではなく、明確な党派性を持った明らかな政治組織だ。

Moon Organizationの目標は政治だ」

報告書は統一教会のハニートラップまがいの工作についても赤裸々に明かしている。

それによると1971年、文鮮明の肝入りで少人数の若い女性信者が集められ、特別PRチームが編成されたという。

その任務は、①議員やスタッフと親しくなり、統一教会を理解させて否定的イメージを改善し、

議員やスタッフを韓国の支持者にすることだ。

それで、ある程度親しくなったらワシントン・ヒルトンのスィートルームで夕食を共にし、

教団のPRビデオを見せるなど、詳細な手順が決められていたとされる。

当初、女性信者チームは複数の日本人信者を筆頭に8人態勢だったが、のちに20名(うち男性信者3名)に増員され、

約3年間に連邦議員5名とそのスタッフ5~6名がスィートルームに招待された(342ページ)。


報告書には前出の米統一教会トップのニール・サローネンが、

「各々が文鮮明師がお作りになった別々の団体の所属であることを肝に銘じること」と発言し、

多様な個別団体の外見をとっていることの利点を強調したとの記述も見える。

これこそが旧統一教会の原型といえるだろう。



日本でも旧統一教会は多くのタコ足団体を持つコングロマリットの体裁をとり、教団本体を巧妙に覆い隠している。

日米の「汚染度」の差には呆然とするしかない。

報告書は、統一教会の「組織的特性」を端的にこう指摘している。

文鮮明率いる統一教会や関連世俗団体は、基本的に単一の国際組織である。

この組織は各部所の相互流動性、すなわち、人事・資産アセットを国際間で動かしたり、

営利組織と非営利組織の間で動かすことで成り立っている」(387)ページ

この分析ほど、旧統一教会の本質を射抜くものはない。

今、自民党の多くの国会議員が統一教会の名称変更で、同一団体だという認識がなかったと言い訳している。

政治家としてその弁明が通用するとはとても思えないが、

多くの日本人にとって上記のような統一教会組織の特徴が、

その実像をつかみきれずにいる理由のひとつになっていることはまちがいないだろう。

「また米国では政治活動も行ってきた。これらの活動の中には韓国政府に資するものや、

米国外交政策に影響を与えるものもあった。

株主支配権を得るため、信者の名義を使い買収資金源を隠匿した。

協会などの非課税団体を使って政治的・経済的活動を維持している。」

統一教会福音派の有名テレビ伝道師やハーバード大宗教学者、大物共和上院議員らなどを動員し、

文鮮明の大統領特別恩赦アピールを大々的に展開していったのである。

その結果、文鮮明は恩赦こそ獲得できなかったものの、1年半の刑期を5カ月減じて出所することができた。



これ以降、アメリカにおいては政治を動かす重要なファクターが世論であることを痛感した文鮮明機関は、

保守系新聞「ワシントン・タイムズ」創刊など、メディア戦略を一段と強化・巧妙化させた。

1982年に創刊された『ワシントン・タイムズ』は、韓国、日本、南米の新聞社やUPI通信社を保有する、

統一教会関連の国際メディア複合企業だ

財務面でも日本人コネクションを利用して独自の漁業・卸流通網を開拓し、

80年代の米国寿司ブームを支えるレストラン事業や不動産事業を展開し、

メディア業での赤字を埋め合わせることに成功した。

78年の中間選挙時には信者らによるフレイザー議員の選挙活動の妨害工作もあった。

その影響もあってか、フレイザー議員は落選し、さらに自宅が犯人不明の謎の放火にあっている。

さらに84年には、委員会の主席調査スタッフだったR.ボッチャー氏(当時44歳)が、

ニューヨークのアパート屋上から謎の転落死を遂げるということもあった。




日本での聞き取り調査は順調でなかった。

報告書によれば、フレイザー委員会には複数の国会議員をはじめ、

多くの日本人から「調査は日米関係も視野に入れて広範に調査すべき」との要望が寄せられていたという。

日本に立ち寄り、証言したいとする5人~10人ほどの日本人、韓国人に聞き取りをする準備を進めた。

しかし、この調査は実現しなかった。日本政府当局がフレイザー委員会に非協力的で、

委員会スタッフのビザ発給条件として「面接対象は米国人にかぎる」という制約を課したためだった。

日米両国の親密さを考えると、この日本政府の対応は不可解だ。

フレイザー委員会の活動を制約したいという政治的思惑が日本政府側にあったのではないか。

今、与党自民党内に「日本のフレイザー委員長」がいないことがこの国の悲劇なのだろう。

集英社オンライン 小西克哉




‘@実に分かりやすい。日本で統一教会がいまだ繰り広げているそのものだ。

そして、自民党の多くの議員が長年統一教会に加担してきた。

だから、いまだ岸田政権は及び腰なのだ。

日本は米側の統一教会調査に非協力どころか、文鮮明の『釈放』を要請していた。

安倍晋三氏の祖父である岸信介氏が、米大統領を務めていたロナルド・レーガンに、文鮮明の釈放を要請。

さすがに敵わなかったようだが、その後金丸信氏が圧力をかけて、本来入国できない文鮮明を、

超法規的措置で日本に特別入国させた。入国後元総理の中曽根康弘氏と会談。

30日には「北東アジアの平和を考える国会議員の会」主催の歓迎晩餐会が開かれ、

文鮮明は議員を前に講演を行った。まるで国賓のようなスケジュールだった。

最終日の31日、文鮮明は金丸氏と会談。

4月1日午前、文鮮明大韓航空で日本を発ち、韓国に向かった。

日本滞在の間、文鮮明は各地の統一協会信者集会に出席し、ハッピーワールドなど霊感商法企業も訪問。

「事前に提出した予定表にない行動」を許し、「政府みずから統一協会霊感商法に加担した」との強い批判を浴びた。

当時も全国霊感商法対策弁護士連絡会全国弁連)の元には、統一教会による霊感商法の被害相談が殺到。

91年だけで約1800件、被害額は約92億円だったという。

こんな大問題を引き起こしている宗教団体に便宜を図ろうと、政治家が法務省に圧力をかけ、釈放まで要請していた。

どれだけ深い関係だったのかということが良く分かる。

統一教会を擁護するような発言を繰り返す人たちは、完全に統一教会に騙されているということに気付いていない。

既にマインドコントロールされているのだ。

それは関係している政治家も同じだ。



日本では政治家が統一教会に関与し動かないから、「統一教会はそこまで悪くないのでは」と思う人が出てくる。

ましてや、自分が被害に合っていないとなおさらだ。

現に私の知り合いの一人は、この問題を「また立憲が重箱の隅をつついている」と揶揄する。

ことの本質、重大さを理解していないのだ。

米国では40年前に既に綿密に対応していた。

日本政治の闇は深く、罪は重い。

こんな危機感で世界に勝てるはずもない。