< プレジデントオンライン>
東北大学の川島隆太教授は「5~18歳の児童・生徒224人を対象に3年間、脳の発達をMRIで調べた。
その結果、毎日スマホを使う子は脳の発達が止まっていることがわかった」という。
特定のアプリが成績に著しい悪影響を与えている、使うアプリの数が多いほど子どもたちは学習に集中できなくなる。
子どもたちに、「自宅で勉強中にスマホを使っているかどうか」とアンケート調査をすると、
スマホを持っている子の8割近くが勉強中にスマホを使っている。
そのときどんなアプリを使うかたずねると、1つのアプリしか使わない子は2割くらい。
半数近い子どもたちは、複数のアプリを切り替えて使っている。
一方で、子どもの学力に関する定量データを私たちは持っています。これとアプリの使い方のデータを突き合わせると、
「勉強中に使うアプリの数が多ければ多い子どもほど、学力が低い」という非常にきれいな相関が見られました。
これは、アメリカの大学生たちがパソコンで宿題やレポートを書くメイン作業に、
SNSが割り込んでくることが問題視されたのと、とても似た話です。
スイッチがあっちに入ったり、こっちに入ったりするスイッチングが多くなれば多くなるほど、
注意力が散漫になっていくことが、データとして示されています。
逆に、パソコンでレポートを書くことだけ、あるいは1つのSNSだけをずっと続けているぶんには、
あまり大きな問題は起こりません。これはスイッチングがないからです。
スマホを「勉強そのもの」に使う──宿題をするときや作文を書くとき、資料を漁ったり難しい言葉を調べたり、
地図で場所を確認したりするなら、問題はないだろう、と思う人がいるかもしれません。これは大きな間違いです。
こういう学習は効果が薄いだけでなく、脳に損傷を与えてしまう恐れすらあります。
スマホを使って学習するくらいなら何もしないほうがましだ、と言いたいほどです。
私たちは、健康に問題なくふつうに成長している子どもたちを対象に、脳の発達の様子を3年間、
MRI装置を使って観察する研究を続けてきました。
この研究から、一方向型よりも双方向型のほうが、子どもたちに深刻な症状が出ることがわかってきました。
一方向型に何の問題もないのではありません。
たとえばテレビを長時間視聴する習慣が長く続くと、脳に発達の遅れが生じます。
ただし、遅れが出る領域は、大脳皮質の一部に限られます。
ところが、スマホの長時間使用など、双方向性でスクリーン・タイムが長くなると、「大灰白質」「大脳白質」の両方が、
かなり広範にわたって発達に遅れが生じているという、衝撃的な事実が明らかになったのです。
インターネット習慣がない、または少ない子どもたちは、3年間で大脳灰白質の体積が増加していました。
ほぼ毎日インターネットを使う子どもたちは、増加の平均値がゼロに近く、恐ろしいことに、ほとんど発達が止まっていたのです。
おそらくはスマホを使ってインターネットを使いすぎたことによって、脳の発達そのものに障害が出た、と思われます。
極論すれば、3年間スマホをまったく使わなかったか、または使っても1日1時間未満の使用にとどめた中学3年生は、
脳が小学6年生から順調に発達したので、中学3年生相当の脳を持っています。
ところが、3年間スマホを毎日頻繁に使っていた中学生は、脳が小学6年生から発達しなかったので、
小学6年生相当の脳を持っています。この二人が同じテストを受ければ、脳の発達が3年分も違うのだから、
結果が大きく違わないほうがおかしいのです。
この恐ろしい事実のことを、くれぐれも真剣に考える必要があります。
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川島 隆太(かわしま・りゅうた)
東北大学加齢医学研究所 所長/脳科学者