新型コロナのパンデミックによる社会の混乱を背景に、
健康悪化を含めさまざまな理由で50―60代の労働者が退職。
慢性的な人手不足につながっており、何年にもわたり英国の経済成長の足を引っ張ると予想されている。
政府にとって労働人口の縮小は、経済の潜在成長力を低下させ、賃上げ圧力とインフレをあおるため、頭の痛い問題だ。
英国はEU離脱による貿易や投資の停滞もあって、成長が抑圧されている。
主要7カ国中で、経済規模が未だにパンデミック前の水準より小さいのは英国だけだ。
英国家統計局によると、2019年第4・四半期以来、英国の16歳から64歳の労働人口は440万8000人減り、
うち31万3000人が50歳以上だった。
生活費が高騰しているにもかかわらず、50─64歳の労働人口は、昨年半ばに付けた最低水準から6万8000人しか増えていない。
イングランド銀行(英中央銀行)は先月、英国全体の労働参加率は予見可能な将来にわたってパンデミック前の水準を下回り続ける、との見通しを示した。
ハント財務相は、英国には彼らが「ゴルフコース」から職場に戻ることが必要だ、と訴える。
しかし早期退職者の多くは比較的裕福なため、その気にさせるのは容易ではない。
ハント大臣は15日の予算に復職奨励の政策を盛り込むことを検討している。
アパレル企業、ファッション・エンターのジェニー・ホロウェイCEOにとって、労働者の確保は優先課題だ。
英国のEU離脱後に欧州大陸からの労働者が減っていることもあり、さらに重要性が増している。
同社はそのために就労条件を改善しており、熟練の縫製職人の時給は20ポンド(24ドル)と、英国平均を大幅に上回る。
ホロウェイ氏は、「技術があるのは高齢の労働者だ。われわれが必要とするスキルを備えた若い人々は見つからない。
だから高齢労働者を引き留めることは極めて重要だ」と語った。
イギリスのスーパーマーケットで、トマトなど一部の野菜の品薄が続いている。
大手スーパーマーケットでは、購入数の制限を設けるなどの対策を講じている。
イギリスメディアでは、トマトやピーマンなどを使わずにできる料理のレシピを特集するなど、
食卓にも影響が出始めている。
タリア料理店では、トマトソースを使わないメニューの提供を始めた店も出てきている。
トマト不足の原因の1つには、冬の間の主な輸入先となっている原産国スペインなどで、
天候不順によりトマトなどが不作だったことが挙げられている。
イギリスの農家らの保護を訴えているロビー団体の代表リズ・ウェブスター氏は、
今回の事態が、イギリスのEUからの離脱、いわゆる「ブレグジット」と関係していると主張。
「政府は最初から現実を直視していない」と批判。
ブレグジットによって、EU圏とのビザ手続きの優遇措置がなくなったことなどから、EUからの労働者が減少。
労働者不足によって、イギリス国内での野菜の生産量の減少につながっているという。
「ブレグジットの後、農家は労働力不足に悩まされるようになりました。
生産者は、自分たちの作物が畑で腐っているのを目の当たりにしているのです。
だから、みんなリスクを避けて生産を調整しているので、生産量が減っているのです」と訴える。
実際に、1990年には134,000トンだったイギリス国内でのトマトの生産量が、2021年には68,000トンとほぼ半減。
また、ウェブスター氏は、ブレグジットによってヨーロッパからのトラックなどでの輸送も煩雑になったため、
生産者側は、天候不順などで供給量が減った場合に、イギリスへの輸出ではなく、EU内での輸出を優先するようになったと指摘。
政治・政策の不備は国民の生活に影響する。日本も肝に銘じるべきだ。