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米中国交回復以来の「厳しい」警告。

3月6日、中国の習近平主席は共産党政治局常務委員の王滬寧・蔡奇氏らを率いて、

開催中の政治協商会議の経済界関連の分科会に出席、「重要講話」を行った。

その中で習主席は、中国の置かれている国際環境を語る文脈において、

「米国を頭とする西側諸国はわが国に対して全方位的な封じ込めや包囲、抑圧を行い、

わが国の発展に未曾有の厳しい試練を与えている」と、異例の対米批判を行なった。

それまでは、習主席自身は米国のことを名指して批判することはほとんどなかった。



習主席の対米発言の翌日の7日、中国の秦剛外務大臣(外交部部長)は、全人代関連の記者会見を行い、

1時間50分に渡って14の質問に答えたが、米中関係・台湾問題・インド太平洋戦略、

一帶一路について語る場面では彼は終始一貫、米国を名指して批判。

「米国が中米関係にガードレールを設置して衝突してはいけないというが、

もし米国側がブレーキを踏まないで誤った道に従って暴走すれば、

いくら多くのガードレールがあっても脱線と横転を防止できないため、

必然的に衝突と対抗に陥るだろう。その災難的な結果の責任を誰が負うのだろうか」と発言。

この秦剛発言の1週間前の2月28日、米連邦議会下院金融委員会は、台湾に関する3つの法案を圧倒的多数で可決。

「台湾紛争抑制法案」「台湾保護法案」「台湾差別禁止法案」の3つ。

その中で特に注目すべきなのは、「台湾紛争抑制法案(Taiwan Conflict Deterrence Act)」。

この本案には、米国財務省中国共産党幹部とその親族たちの在米資産の調査を求める条項と、

米国金融機構に対し中共幹部と親族に金融サービスを提供することを禁じる条項が含まれている。

アメリカンボイスの中国語Webが報じたところによると、法案の提出者である下院議員フレンチ・ヒル氏は、

その意図について「法案は中国共産党に次のことを知らせようとしている。

台湾を危険に晒し出したら、彼らの財産状況が中国公衆の知るところとなり、

彼らとその親族は厳しい金融制裁を受けるのであろう」と語っているという。

つまり、この「台湾紛争抑制法案」が成立すれば、中国共産党政権が台湾侵攻に踏み切った場合、

共産党幹部とその親族たちの米国での隠し資産が白日の元に公開されてしまうだけでなく、

その資産が制裁の対象となって凍結・没収される可能性もあるのである。

そして、これを持って中国共産党の台湾侵攻を阻止する狙いの法案であろう。



2021年7月26日、中国の謝鋒外務次官は中国の天津でシャーマン米国務副長官と会談。

その中で謝外務次官は、「やめて欲しいことのリスト」を米国側に手渡したことは明るみになっている。

そしてリストの筆頭にあるのは、「中国共産党員とその親族に対する入国ビザの制限」とのこと。

共産党の幹部たちは米国に「虎の子」の財産を持ち、彼らと彼らの親族の米国入国に対する制限は、

政権全体にとっての大問題となっているからこそ、それは米国に「やめてほしいこと」のリストの筆頭に上がった。

このことは逆に、中国共産党政権のアキレス腱がどこにあるのかを暴露している。

したがって、中国共産党政権の高官たちは、自分たちの財産を守るために、

習主席の企む「台湾併合戦争」を、全力を挙げて妨害し、阻止しなければならない。

それはまさしく「法案」の狙うところである。



石 平(評論家)現代ビジネス