人工衛星で光の量を測定してわかった中国経済の真の実力。
エコノミストのエミン・ユルマズさんは「独裁専制国家のGDPは実態と大きく乖離する。
中国の本当のGDPは、中国政府当局の発表の6割程度しかないという研究結果もある。
中国経済は10年後には弱体化しているのではないか」と指摘。
深刻なのは食料に関わることである。
一般的な中国人の食生活に不可欠な食材は、大豆とトウモロコシと豚肉と言われている。
大豆とトウモロコシは豚の飼料になるので、大げさに言えば、中国人とは三位一体の関係を成す。
こうした食料はコモディティ相場と切っても切れないものなのだけれど、大変興味深い現象が見られる。
トウモロコシ価格が上がった年には、肉の価格が下がることが多いのである。
特に牛肉の場合は顕著なのだ。
なぜか。本当は来年まで育てて大きくしてから売るつもりであった牛まで、と殺して売ってしまう傾向が強くなるからである。
だから、トウモロコシ価格の高かった年には牛肉価格は下落し、その翌年は市場に出回る牛肉自体が減るため、価格は急騰することになる。
2022年夏のトウモロコシ価格はかなり高かったことから、おそらく2023年の牛肉価格は上昇するものと私は予測している。
これらは牛肉市場の話だが、流れ的には豚肉も大差がない。
こういうサイクルは、農作物についてもよくあることで、その年の価格が上がっていたら、翌年はまったく振るわない。
と思ったら、その翌年は急騰したりする。
要は、農業従事者が相場を見ながら“生産調整”するわけである。
その意味で、中国は豚肉、大豆、その他もろもろの作物が不作となり、食料危機に発展する火種を常時秘めている。
すでに一部の作物については価格が急騰しているので、その不満が各地で発生するデモの要因になっている可能性もある。
余談になるが、他国に目を転じると、ここのところスリランカ、イランなどでも大型デモが起きている。
その要因は当然ながら、食料インフレがあまりにも厳しいからだろう。
権威主義陣営である中国、ロシア、イランなどでは早くも食料危機が訪れているのではないか。
そんな印象を私は抱いている。
国民にとって、食えなくなること以上の苦しみはない。
他の自由や人権については我慢できるけれど、飢えだけはどうもならない。
今後、中国などでは社会不安が高まっていく可能性がある。
そしてこの食料問題に関し、中国は米国に弱みを握られている。
中国は農産物を毎年、米国から相当量輸入している。
中国は経済安保上、相手陣営に強く依存したくないはずで、本音では米国からはあまり買いたくないだろう。
しかし、背に腹は代えられない状況になっている。
米国は中国からアパレル、家電、雑貨、家具、アセンブリー部品などを輸入している。
その逆の、中国が米国から輸入する品目のほとんどは、食料(農作物、肉類、酒類)なのである。
そして、トランプ政権時代から米国は中国製品や品目に対して高関税をかけるようになった。
そこで、中国も米国の高関税に対抗して、同程度の関税を輸入品にかけると宣言し、実行した。
しかし、両国の事情は大きく異なっていた。
先に述べたように、中国が米国から輸入する品目のほとんどは食料である。
これに高関税をかけてしまい、最終的には消費者である中国国民を苦しめることになったのである。
ただ、米国民も高関税分のコストを引き受けなければならないので、お互い様と言えないこともない。
そこで米国は輸入物価を下げるため、意図的に“ドル高”に持っていった。中国が20%の追加関税分を20%のドル高で“相殺”したわけである。
だが、中国は米国と同様の手は使えない。
知ってのとおり、このところどんどん人民元レートが下落している。
輸入はできるものの、輸入価格はドルベースで高くなったし、さらに米国への報復措置としてかけた追加関税分が上乗せされている。
こうした措置を、バイデン政権が撤廃するかもしれないと、中国側は期待を抱いていた。
だが、それは見事に裏切られ、今日に至っている。
<プレジデントオンライン>エミン・ユルマズ
‘@日本は他国の影響を受けても他国に影響を及ぼすことは低い。
米国の強さを改めて感じる。
恐怖に思う国があっても不思議ではない。