発火点となったのは3月10日のカリフォルニア州「シリコンバレー銀行(SVB)」の経営破綻。
同行は増資失敗報道直後の9日に経営危機がツイッターで拡散され、わずか1日で5兆円強。
全預金の4分の1が一気に引き出された。
ネット時代を象徴するような取り付け破綻で、金融当局の対応も追い付かなかった。
同行が破綻した2日後には暗号資産(仮想通貨)企業を主取引層にするシグネチャー銀行が経営破綻。
この預金流出は「デジタルバンク・ラン」や「サイレントバンク・ラン」と米国で呼称され始めた。
銀行の店頭に顧客が預金引き出しに殺到するこれまでの取り付けと違い、デジタルを通じて無言のまま瞬時に預金が大量流出する。
しかもSVBの預金の9割超は預金保険対象外(25万ドルまでの預金は全額保護される)であったことから、流出は加速。
そして、2行の経営破綻の余波はまだ続いている。
次に懸念されているのが米中堅地銀のファースト・リパブリック銀行だ。
同行の預金は3月末に4割も減少したため、JPモルガン・チェースなど大手11行が300億ドルの預金を提供し危機を回避している。
巨額の預金流出に伴い株価が急落したファースト・リパブリック銀行が近く公的管理下に置かれると、ロイター通信が28日報じた。
実際にそうなれば、SVBなどに続く3行目の米銀破綻で、2008年の金融危機リーマン・ショック後で最大の破綻規模となる。
ファースト銀の同日の株価は前日終値比43%下落し、3.51ドル。SVB破綻前と比べ9割超の下落となる。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは28日、公的管理下に入った後に複数の銀行が買収することを検討中と報じた。
銀行規制の国際ルールを策定するバーゼル銀行監督委員会は3月23日、
「直近の出来事から教訓を得るため、規制上および監督上の影響を評価することで合意した」と発表。
震源地の米国も5月上旬までに銀行監督・規制の強化策を公表する予定だ。
金融不安が再び広がる懸念があり、市場関係者の関心が高まっている。