せっかく日本向けに情報を出しても大して儲からないので、わざわざコストをかけて翻訳することがなくなってきている。
なので、日本語しかできない状態で業界の最新情報や技術情報を得るのは難しいことを知っておくべき。
そう訴えるのは、IT戦略コンサルタントで元国連専門機関職員の谷本 真由美さん。
これまでの日本で、最先端の情報がいち早く翻訳されて書籍になったりウェブサイトに掲載されていたりしたのは、日本人にお金があったからにすぎません。
機械化が進んでいると言っても翻訳はまだまだそれほど安くはない。
翻訳されたものではなく、日本人が発信している情報を受け取ればいいと思うかもしれないが、それはかなり危険。
なぜかと言うと、貧しくなっている日本では「儲かれば何でもいい」という風潮の元、真偽の定かではない情報がたくさん出回るようになってきているからだ。
たとえば、ここ最近、怪しい医療本や反ワクチン本をよく書店で見かける。
こうした本は以前は名前を聞いたことがないような中小の出版社が出しているくらいだったが、今では大手出版社からも平気で出版されるようになってきている。
イギリスでは、そんな本は本屋にもAmazonにも絶対に並ばない。
国がきちんと規制をしているのと、出版社も訴訟を起こされるリスクを避けようとするからだ。
またもし、著者が医者なら医師免許をはく奪される可能性がある。
きちんと校正を経て出版されるはずの書籍ですらもその状態だから、ネットは言うまでもない。
Twitter上では「新型コロナウイルスは人間がつくった生物兵器だ」
「ディープ・ステートという悪の勢力が世界を裏から操っている」など、怪しい情報ががんがん飛び交っている。
そうした情報を出しているアカウントが支持者を得て、インフルエンサーになっているぐらいだ。
こうした状況の中、今の日本で正しい情報を集めるのはかなり難しい。なので、海外の情報を直接、自分で得られるようにしておく必要がある。
また今後身につけるべき技能や知識というのも、日本国内だけで評価されるものではなく、海外の先進国でもある程度評価されるものでなければならない。
これが多くの日本人に欠けている視点。
日本人はスキルを身につけるといっても、国内でしか役に立たない資格の話しかしない。
たとえば、IT系の資格だと、ITパスポートなどが人気だが、この資格は外資系の企業にはほとんどプラスに働かない。
また、英語の資格であってもTOEICの点数なども海外では重視されない。
これは学歴に関しても同様。
他の先進国の人々はまず国境を越えて稼ぐことを前提に話をしているので、資格や学歴も他の国でも通用することを前提にしている。
日本国内で評価される資格や教育を受けているだけでは、たとえば外資の会社に就職したり、多国籍なメンバーを集めるプロジェクトなどに参加することが難しくなる。
それ以前に、海外で働こうとしても、世界で評価される資格や学歴がなければ採用されない。
つまり、国内の偏差値だけで話をしているような日本というのが非常に特殊なのだ。
今後海外を相手に稼いでいくことを考えたら、日本国内だけの視点で教育を考えていては、結局日本でしか稼げない人ができあがる。
さらに習い事に関しても日本ではいまだに親はバブルの頃の感覚で子供の習い事を選んでいる人だらけ。
無駄な投資をしないためにはまず他の国の実態を知り、食べて行くのに必要な技能や考え方が身につきそうな課外活動は一体何なのかということをよく考えるべき。
ショッピングモールに入っているようなお遊び半分の英語教室にお金を払うことは本当に意味があるのかどうか立ち止まって考えてみるべきだ。
谷本真由美『激安ニッポン』(マガジンハウス)抜粋、編集。