「週刊文春」はなぜ五輪組織委の「発売中止、回収」要求を拒否するのか。
‘@当初より指摘しているが、この報道が出たときに、多くのコメンテーターや評論家は、
本人が怒っているにもかかわらず、大物タレントも「直美は気にしていない」などと発言し、
渡辺直美さんなどを侮辱する演出よりも、
むしろ、「佐々木氏を退陣に追い込もうとする人がいる」との方に重きを置いて報道した。
そして、この件は意外と早く報道されなくなった。
文春も報じているように、そもそも、IOCからも高い評価を受けていたMIKIKO氏の演出を、
電通出身の佐々木氏を推す電通の代表取締役らによって、
2020年5月に責任者が佐々木氏に交代し、MIKIKO氏が演出チームから排除された。
なぜ、そうなったのか。
渡辺直美さんの件同様、そのことが問題なのに、佐々木氏おろしにすり替えられてしまった。
この時期に、佐々木氏を辞めさせることが得策なのかと。
私は多くの人の読解力の無さに嘆いたが、その裏には、政府(組織委員会)と電通の大きな力が、
各テレビ局に働いていた。
だから、本質をすり替え、そちらの方を視聴者に植え付け、ピシャりと報道を止めた。
――「週刊文春」編集長よりご説明します
報道の通り、「週刊文春」編集部は、4月1日、
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長名で、
「週刊文春」4月8日号及び3月31日配信「文春オンライン」が報じた
開会式の演出案を巡る記事について抗議と雑誌の発売中止と回収などの要求を受けました。
組織委員会が対象としているのは、「週刊文春」4月8日号の記事
「白鵬、海老蔵、後援者...森・菅・小池の五輪開会式“口利きリスト”」(本件記事)、
及び3月31日に文春オンラインに「スクープ速報」として配信した「『AKIRA』主人公のバイクが..
.渡辺直美も絶賛した「MIKIKO チーム開会式案」の全貌」(本件ネット記事)の2つです。
組織委員会の要求は以下の通りです。
1.本件記事が掲載されている週刊文春4月8日号を直ちに回収し、今後の販売を中止すること
2. 本件ネット記事を直ちに削除すること
3. 保有している内部資料を直ちに廃棄し、今後、その内容を一切公表しないこと
「週刊文春」はこれらの要求に応じることはできません。その理由は以下の通りです。
まず、東京オリンピックは、日本国民の多額の税金が投入される公共性、公益性の高いイベントです。
日本で開催されるこのイベントが、適切に運営されているのか否かを検証、報道することは報道機関の責務です。
(あってはならないが、慰留しました)
組織委員会は抗議文で次のように述べています。
〈開閉会式の制作に携わる限定された人員のみがこれにアクセスすることが認められた極めて機密性の高い組織委員会の営業秘密であり、世界中の多くの方に開会式の当日に楽しんでご覧いただくものです。万一、開会式の演出内容が事前に公表された場合、たとえそれが企画の検討段階のものであったとしても、開会式演出の価値は大きく毀損されます。加えて、組織委員会は、様々な代替案を考案するなど、多大な作業、時間及び費用が掛かることになります〉
開会式の演出内容が、企画の検討段階であったとしても事前に公表された場合、演出の価値は大きく毀損されるとあります。
しかし、出演者を侮辱するような企画案を開会式の責任者である佐々木宏氏が提案していたことは、
小誌の報道で初めて明るみに出ました。
この報道を受けて、橋本会長は、「ショックを受けた。容姿を侮辱するような発言や企画の提案は絶対にあってはならない」と述べ、佐々木氏の辞任を認めました。
開会式演出の価値を大きく毀損させているのは、佐々木氏であり、
その人物を責任者に起用した組織委員会ではないでしょうか。
「週刊文春」では3月18日発売号から、2019年6月から開会式の責任者だった演出振付家・MIKIKO氏が、
電通出身の佐々木氏を推す電通の代表取締役らによって演出チームから外されていく経緯などを報じてきました。
2020年5月に責任者が佐々木氏に交代し、MIKIKO氏が演出チームから排除され、
演出の内容はMIKIKO氏チームの案と別物になっています。
排除の過程で葬り去られてしまったMIKIKO氏の案はIOCからも高い評価を受けていました。
この提案がどのようなものであったのか、その骨子を報じることは、広く国民の知る権利に応えるものです。
侮辱演出案や政治家の“口利き”など不適切な運営が行われ、巨額の税金が浪費された疑いがある
開会式の内情を報道することには高い公共性、公益性があります。
著作権法違反や業務妨害にあたるものでないことは明らかです。
小誌の報道に対して、極めて異例の「雑誌の発売中止、回収」を求める組織委員会の姿勢は、
税金が投入されている公共性の高い組織のあり方として、異常なものと考えています。
もし、内部文書を基に組織の問題を報じることが、「著作権法違反」や「業務妨害」にあたるということになれば、
今後、内部告発や組織の不正を報じることは不可能になります。
小誌は、こうした不当な要求に応じることはできません。
東京オリンピックは、誰のためにあるのか。組織委員会や電通、政治家など利益を得る一部の人々のために、オリンピックがあるのではないか。
「週刊文春」は、組織委員会の要求を拒否し、今後もオリンピックが適切に運営されているのか、
取材、検証、報道を続けてまいります。
「週刊文春」編集長 加藤 晃彦