企業への課税強化を打ち出すアメリカのバイデン政権が、
国境を越えて事業を行う巨大企業100社程度を対象に、
国ごとの売り上げに課税する新たな税制ルールを主要各国に提案。
国境を越えて事業を行う企業への課税をめぐっては、巨大IT企業などを念頭に、
「デジタル課税」と呼ばれるルール作りがOECD=経済協力開発機構で進められている。
これについてバイデン政権は、業種を問わず、世界で事業を行う企業100社程度を対象に、
国ごとの売り上げに応じて課税する新たな税制ルールを日本やヨーロッパなどの主要国に提案した。
国際的な法人税改革で主導するねらいとみられる。
欧米のメディアは、「GAFA」などとも呼ばれる巨大IT企業だけでなく、
自動車メーカーなども対象になる見込みだと伝えている。
バイデン大統領は、新型コロナ禍、経済の立て直しを急ぐため、
個人への現金給付や国内のインフラ整備になどに420兆円を投入する新たな計画も発表。
こうした巨額の財政出動の財源を賄うため、トランプ前政権が21%まで下げた法人税率を、
28%に引き上げる方針などを盛り込んだ税制改革案を打ち出した。
バイデン大統領は「さまざまな制度の抜け穴を使って少なくとも55の大企業が、
税金の支払いを免れているという調査もある。これは納税している多くの国民にとって不公平だ。
普通の市民だけが負担を強いられるのはうんざりだ」と述べ、
大きな課題になっている経済格差の解消に向けて、大企業などの負担を増やす政策へと転換する姿勢を示した。
アメリカ財務省は改革によって、15年間で275兆円の税収が見込めるとしている。
イエレン財務長官は、5日、「世界では30年間にわたって法人税率を引き下げる競争が行われてきた」と強調。
引き下げ競争を止めるために主要国の間で共通の最低税率を設定するよう呼びかけた。
バイデン政権は、自国だけが税率を引き上げることで競争上、不利になることを避ける思惑があるようだ。
日本でも、竹中平蔵氏を筆頭に、もっと企業の税率を下げろと叫び続けている。
日本は実効税率で2014年度の34.62%から、2018年度からは29.74%と段階的に引き下げてきた。
また、世界的に事業を展開する多国籍企業は、税率の低い国の子会社に利益を移すといった手法で、
税負担を抑えていることも問題視されている。
「課税逃れ」とも呼ばれるこうした企業の行動は、「ファイザー」や「アップル」などが、
国ごとの税の仕組みの違いをたくみに利用していると批判を受けている。
また、アメリカでは、トランプ政権時代に導入された減税制度を活用して、
大手55社が2020年に合わせて4兆円以上の利益を上げているのに、
実質的に法人税が支払われなかった。
バラク・オバマ元大統領も、この四半世紀の間に進んだ企業のグローバル化への対応の遅れで、
2兆ドルを超える米企業の利益が課税されないまま国外に滞留していると憤った。
最低税率に関するルールで合意が実現すれば、こうした状況に歯止めがかかることになり、
大きな転換点となる。
ただ、具体的に最低税率の水準をどう設定するかについては、各国の意見が分かれており、
難航するものとみられる。
もし、バイデン大統領の28%に引き上げる方針に日本が合わせれば、
日本の税率はさらに下がるという皮肉?なこととなる。
いずれにしろ、大企業は社会の規範となって税金を支払うべきだ。