「オミクロンは重症化率が低い」に隠れた被害の実態。
専門家が私とまったく同様の見解を述べていたので、
私などよりは高度な説得力があるだろうと期待する。‘@
オミクロン株による新型コロナ感染症は、従来のデルタ株などに比べて重症化しにくいことは、
すでに明らかにされている。
これ自体は朗報だが、ウイルスの伝播性の強さと免疫回避の性質は、警戒すべきこと。
ところがメディアなどでは、専門家でさえオミクロンの重症化率の低さや症状の軽さが強調されるあまり、
被害の実態がわかりにくくなっているのではないか、と警報を鳴らす。
オミクロン株は風邪みたいなものと感じたり、デルタの時と比べて被害は大したことはないと、
多くの人が勘違いしているかもしれないと訴える。
被害の一つの指標になる重症者(ICU患者)の数を見ると、例としてG7の7カ国とイスラエルの状況を見ると、
デルタ型流行における重症者数と比べて現在のオミクロン型流行における重症者数は遜色ない。
米国、カナダ、フランス、イタリア、イスラエルの重症者数ピークは、
むしろオミクロン型がデルタ型を上回っている。
日本はこれらの国のなかで人口比重症者数が小さいので目立たないが、
今日(1月30日)時点での重症者数は734人であり、この増加のスピードは、
これまでの第1〜4波をはるかに上回っている。
おそらく第5波(デルタ型)流行並みの重症者数にはなるのではないだろうか。
なお、734人という現重症者数は東アジア、西太平洋諸国・地域のなかで、
フィルピンに次いで第2位の数字だ。
最も深刻な被害である死亡は、驚くべきことに、米国、カナダ、英国、フランス、イタリア、イスラエルでは、
新規死者数/日において、今回のオミクロンがデルタを上回っていて、日々記録を更新している。
重症者数以上に死者数に被害の大きさが現れている。
日本では、日々の死者数が30–40人であり、欧米と比べてかなり低く抑えられているが、
この死亡増加のペースはやはり従来の流行のペースを上回っている。
死亡事例は感染ピークよりもかなり遅れて多く出てくる。
このペースが続けば、ひょっとすると、第5波のピークを上回るのではないかという気がする。
オミクロン型感染症は軽症であるはずなのに、なぜ世界中でで最大と思える被害になるのか。
それはとりもなおさず、オミクロンの伝播性の強さとワクチン逃避による感染者数の爆発的増加に帰因する。
重症化率は低くとも、母数になる感染者の絶対数が著しく増えれば、
絶対数としての被害事例は自ずから増えるということ。
米国での死亡者はワクチン未接種者に多いという報道もあるが、
未接種者数はむしろデルタ以前の方が大きいはずで、死者数増加の理由にはならない。
G7-7カ国とイスラエルの陽性事例の推移を見ると、感染絶対数の影響が一目瞭然。
デルタ流行時とは比較にならないほど、いずれに国においても感染者が著しく増えていることがわかる。
これが重症者と死者を増やしている主因だ。
日本のテレビで、医療専門家がECMOの使用について現在数人の患者しかいないとして、
オミクロン病の"軽さ"を強調していたが、ECMO装着を望まない重症患者がいることや、
実際の死亡ペースから考えると、ECMO使用が必ずしも被害の実態を現すものとは言えない。
重症者でなくても容態が急変して死亡する事例や、気管挿管を望まない事例もある。
被害の実態として、死者数の推移をきちんと見る必要がある。
オミクロン感染者の著しい増加で自宅療養者は30万人近くになり、これまで最多だった第5波を越えている。
濃厚接触者の数も著しい増加で、医療提供体勢や社会活動・インフラの維持にも重大な影響を及ぼす。
街のクリニックは患者であふれ、検査キットの枯渇で発熱外来を一時的に閉じる病院も増えている。
そのことによって、ますます感染拡大に歯止めが効かなくなり、この先大きな被害となることが予測される。
オミクロンの流行の肝は重症化率ではなく、感染者数増加そのものがもたらす、
社会機能不全の可能性および感染母数の高さから来る被害の増大であることは、当初から明らかだったはず。
医療従事者やエッセンシャルワーカーの感染は医療崩壊や社会活動のマヒにつながる。
もちろん感染母数が大きくなれば重症者も多くなるし経済への影響も大。
欧州のいくつかの国では、為政者トップがエンデミック(パンデミックから風土病への移行)発言をしたり、
規制解除をしたりしている。それを日本のメディアが取り上げることにより、
オミクロン流行の"軽さ"が強調される結果になっている感がある。
実情は異なり、これまでのパンデミックの流行の波のなかで、最大の被害になろうとしている。
為政者は国民・市民の支持獲得のために迎合した政策を出しやすいし、
経済活動を止めるなという財界からの圧力は常にある。
国民のコロナに対する慣れや飽和感も手伝って、情報が楽観的な方向に流れる嫌いがある。
しかし、パンデミックは決して終わっていないし、これで終息するとかエンデミックになるという、
科学的根拠も現段階ではない。
防疫、医療、経済のバランスを誤ると、今の日本のように社会が立ち行かなくなり、
医療ひっ迫・検査資源の枯渇に陥り(病院にさえ不足)、検査なしの診断、濃厚接触の措置の変更、
トレーシングの縮小などのその場しのぎの策に追われることになる。
これは防疫という観点からはまったくの逆の効果になり、さらなる感染拡大を許してしまうということになる。
Dr. Taira (id:rplroseus)
‘@Dr. Tairaなる人を全く存じ上げないが、専門家が私とまったく同様の見解を述べていたので、
私などよりは高度な説得力があるだろう。
当たり前のことが当たり前に理解できず、公でオミクロンは風邪のようなものと発する。
そのしわ寄せは弱者に向けられる。
それを仕方ないとする今の日本の潮流を、私は憂いでいる。
公で発言させるメディアの責任は重大だ。