世界の目は、ウクライナに注がれている。
10万人規模のロシア軍が、昨年11月からウクライナの国境付近にとどまっている。
ロシア軍は、ウクライナを北南東、三方から包囲し、侵攻の準備は完了している。
プーチン大統領の要求は、「ウクライナをNATOに加盟させない法的保証」だ。
米国もNATOも、「この要求を受け入れることはできない」とロシア側に回答。
そんな中、ロシアでは、将校をまとめる団体、「全ロシア将校協会」が、
1月31日「プーチン辞任」を求める公開書簡を発表。
「全ロシア将校協会」のHPに「ウクライナ侵攻をやめること」と「プーチン辞任」
を要求する「公開書簡」が掲載された。
この公開書簡は、レオニド・イヴァショフ退役上級大将が書いたものだが、
氏は、「個人的見解ではなく、全ロシア将校協会の総意だ」としている。
イヴァショフ氏は、これまでプーチン政権を支持してきた。
国営のテレビ番組にもしばしば登場し、著名で影響力のある人物だ。
問題の書簡には、何が書かれているのか?
イヴァショフは、プーチンが強調している「外からの脅威」を否定しない。
しかし、それは、ロシアの生存を脅かすほどではないとしている。
イヴァショフ氏によると、「ロシアの国家モデルと権力システムが、
魅力的なシステムを作ることができなかったので、ウクライナは、欧米に行ってしまった」
「プーチン政権の政策は、事実上すべての隣国とその他の国々を遠ざける結果になった」とイヴァショフは嘆く。
そして、「世界のほとんどの国がクリミアを今もウクライナ領と認識している。
このことは、ロシア外交と内政の失敗をはっきりと示している」と、強調。
イヴァショフ氏によると、「ロシアは現在、深刻なシステム危機に陥っている。
しかも、ロシアの指導者たちは、国をシステム危機から救うことができない。
システム危機が続くことで、いずれ民衆が蜂起し、政権交代が起こる可能性が出てくる」と危惧する。
イヴァショフ氏は「戦争は、しばらくの期間、反国家的権力と、国民から盗んだ富を守るための手段だ」と訴える。
「ウクライナ侵攻」は、プーチンが「自分の権力と富を守るためだけの戦争」だと訴えた。
今までプーチンを支持してきた強固な支持層だったはずの将校軍団から、
辞任要求を突きつけられたプーチンの衝撃は大きい。
この公開書簡を受けて、プーチン大統領が素直に聞くとは思えない。
ここまで赤裸々にロシア、プーチン大統領の現状を訴えた「全ロシア将校協会」
プーチンは「自分に反逆した将校は許せない」と、全員を抹殺するのか。
しかし、そうなると、軍の動揺は計り知れない。
実際にNATOを拡大しないと規定した国際条約のような文書はない。
言った言わないの話だ。だから見解も分かれている。
ドイツ再統一は1990年9月12日に東西ドイツ、米国、英国、仏、ソ連の6カ国外相が調印した、
「最終解決条約」で決まった。
この条約にはNATO軍は東ドイツ地域に配備されないことが合意され盛り込まれている。
しかし、それ以外の国への不拡大の項目はない。
ロシア外務省は昨年12月17日、米ロ、ロシア・NATOの間で結ぶよう提案した条約案の中に、
NATOの不拡大を盛り込んだ。国際条約で明記したいからだ。
だが、NATO不拡大を正規の国際条約に盛り込むことは無理な要求だ。
NATO憲章にあるように、NATOがほかの国にも門戸を開かれているとの建前を放棄するわけにはいかない。
それは、米国も許さない。
‘@以前にも指摘したが、プーチン大統領が怖がっているのだ。