随分以前に藻でエネルギーを紹介したが、ここまでこぎつけたとは素晴らしい。
藻類バイオマスエネルギー研究を続ける(一社)藻類産業創成コンソーシアム理事長で、
筑波大学共同研究フェローの渡邉信氏のプロジェクトに国の予算がついた。
10年ほど前、「日本を産油国にする」と言って顰蹙を買った渡邉理事長。
筑波大学教授時代から渡邉理事長が研究を進める藻類バイオマスエネルギーは、
下水処理場を使って藻を繁殖させ、濃縮し、原油化するという画期的なプロジェクトだ。
下水処理では、有機物や窒素、リンを取り除くために膨大なエネルギーを必要とする。
その一連の処理を藻が行い、その藻を使って原油を生むというのが渡邉理事長のめざす着地点だ。
日本全国の下水処理場がその舞台。
今回、国土交通省水管理・国土保全局から年3000万円の予算が2年にわたって下りることになった。
「私たちの研究はいま、実証段階へと移行しつつあります。国交省から2年間にわたって予算がつくことになったのは、
下水関係者と勉強会を開いたりしながら、理解を深めてきたことも大きかったと思います。
これは私たちにとって、大きな進展でした。下水処理が公共事業である以上、
国の理解と支援が欠かせなかったからです。とにかく行政が目を向けてくれたことが重要です。
私は、彼らを失望させたくない。いまは成果を上げていくことだけに日々傾注しています」と、渡邉理事長は語る。
現在、日本全国の下水処理量は年間約150億立方メートル。
それをすべて使えば、原油の生産量はこれだけになるということは計算上は示せるが、
下水関係の行政官からは、そのうち実際に使えるのは何割かといった具体的なデータが常に求められている。
もっとも、そうやってさまざまな問題を技術で解決できても、コストの問題は常につきまとう。
たとえば、精製コストの問題なども明確にしていかなければならないわけだが、
実際には石油と比べても大きくは変わらないと渡邉理事長は見ている。
「他の再生可能エネルギーももちろん重要です。しかし、たとえば、飛行機を飛ばすにあたっては、
太陽光、水素などの電気エネルギーは現実的ではない。
なぜならば、オイルほど高いエネルギー密度を持っている資源はないわけです。
これをなぜ使わないのか、ということなのです」と意気込む。
渡邉理事長はエネルギー資源の限られた日本で藻類バイオマスが果たす役割の大きさを確信している。