アメリカの研究に見る子供の発達と結婚、家庭。
子供の発達において、家庭が与える影響は大きい。
米国心理学会(APA)は2005年に発表した報告書で、
「(同性のカップルが親になって子供を育てることは)親として不適格で、
異性の父母と比べて子供の心理的・社会的発達が妨げられるという証拠はない。
子供たちが何らかの面で不利益を受けていることを示す研究は1件もなかった」と述べている。
この報告書は同性婚推進派の主張を裏付ける学術的根拠のひとつとなっていた。
それに対して、APAの見解を否定する研究結果も相次いで発表されている。
ルイジアナ州立大学のローレン・マークス教授は、APA報告書で用いられた科学的手法の問題点を指摘。
その結果、59件のうち4分の3以上(77%)が100人に満たない少人数を調査対象とするものであり、
また結婚を維持する実父母の家庭を比較対照グループとして考慮していないという。
従って、マークス教授は同性カップルと異性カップルの子育てに特別の差がないというAPA報告書の結論は、
科学的根拠が不十分だとマークス教授は述べている。
また、同教授は、同性カップルの子供についても小児期から思春期にいたる時期だけでなく、
成人早期・中期まで追跡した長期的な研究が必要だと指摘。
テキサス大学オースティン校のマーク・レグニラス教授は、
2012年、多様な家族形態で育った18歳から39歳の男女約3千人を対象とした、
「新家族構造調査(NFSS)」と呼ばれる研究プロジェクトを実施。
結婚を維持している実父母の家庭、母親がレズビアン、父親がゲイなど、
8つの異なる家族形態で育った人の経済的、社会的、精神的状況などを比較した。
その結果、ゲイの父親やレズビアンの母親に育てられた人は結婚を維持している実父母に育てられた人と比べて、
「学業成績」「マリファナの使用頻度」「逮捕された回数」「親や大人に性的接触を受けたことがある」
「不倫の経験がある」などで、問題を抱えているという結果が出た。
レグニラス教授は、立派な大人に成長するために例外なく母親と父親が必要なわけではないとしながらも、
小児期のすべてを結婚している父母とともに過ごし、さらに現在も親が結婚を維持している場合にこそ、
子供が成人して成功する可能性がもっとも高いと述べている。
また、米カトリック大学のポール・サリンズ教授の研究では、
米疾病予防管理センター(CDC)が実施している健康や人口統計的な情報に関する調査の、
計159万8千人分のデータを用いている。この中には20万7千人の子供を含んでいる。
また、サンプルには2751組の同性カップルを含み、18歳以下の子供を養育しているカップルは582組。
子供の情緒的問題は、NHISで採用されている「子供の強さと困難さアンケート(SDQ)」のスコアとNHISによる親へのインタビュー調査によって評価。
その結果、同性カップルの子供は異性カップルの子供よりも情緒的な問題を抱えている割合が高いことがわかったという。
「SDQに関して、子供が情緒面・行動面で問題を抱える割合は、同性カップル家庭で9.3%あり、
異性カップル家庭の4.4%と比べて2倍以上であった。
同様に、インタビュー調査では同性カップルの両親は異性カップルの両親の2倍以上の割合(2.3倍)で、
子供が明確ないしは非常な困難を抱えていると報告している(同性カップルが14.9%、異性カップルが5.5%)」
SDQとインタビュー調査のいずれか片方のみで問題がみられる割合は、同性カップル家庭で17.4%、異性カップル家庭で7.4%である。
数値は大きいがリスク比は2.3倍と小さくなっている」
また、「SDQスコアが高く、両親が情緒的な問題を報告してきた子供たちの72%が、
ADHD(58%)、学習障害(49%)、知的障害(7%)のうち一つ以上を患っていると診断されるなど、
同性カップル家庭の子供は異性カップル家庭の子供に比べてADHD、学習障害などの割合が高かったという。
サリンズ教授は「十分なサイズのサンプルで計量分析を行ったとき、
同性カップルの子供は異性カップルの子供に比べて情緒的問題にさらされているといえる」としている。