日本のインフラが抱える構造的な問題。
点検で「緊急に措置が必要」とされた橋のうち300以上が「未着手」。
つまり、緊急度が高いのに手がつけられていない橋が各地にある。
橋の名前は「菖蒲橋」。
フェンスの前には赤い字で「立入禁止」と書かれた看板が立っている。
2016年に腐食が原因で一部が落橋。以降、通行止めの状態が6年半にわたって続いている。
通行人に声をかけたり住宅を回ったりして話を聞くと「架け替え」を求める声が相次いだ。
近くに住むトマト農家の沼田尚人さんは、2歳の息子・晴斗くんが小学校に通うまでに、橋を架け替えて欲しいという。
「菖蒲橋が使えないと、学校まで遠回りする必要があって、子どもが歩いて通えるのか不安です。
しかも、遠回りするときに使う道路はトラックがスピードを出して走っているので、親として正直通らせたくありません。
小学生になる4年後までに直してもらえると安心できるのですが」
農業の大部淳さんは、「菖蒲橋を使えなくなったら、反対側の田んぼに行くまでの時間が4倍近くになり、
農業機械で移動すると30分も余計に時間がかかります。通行止めの後も4年くらいは頑張って続けましたが、
毎日のことで大変で、橋の反対側での稲作は2年前に辞めました」
長野市南部の「岡田川下橋」も「通行止めが続く橋」のひとつ。
3年以上「通行止め」が続いていて、床板は抜け落ちている。
周辺の人に話を聞くと、実はこれまでに4度、市に「早く修理して欲しい」と要望を出しているものの、いっこうに修理は行われないという。
住民からは諦めや危険性を指摘する声が。
隣接地域で区長を務める男性。
「以前は通行止めの柵を乗り越えて通る人もいたので、万が一、危険なことになったらいけないという思いで修理して欲しいと要望を出しています。
ただ、難しいなら早く撤去して欲しいです。大きな被害が出た4年前の台風19号では、
橋にいろいろなものが引っかかりました。もし橋ごと流されれば、下流域の人たちに迷惑をかけると思います」
2022年12月の時点で、全国41都道府県の265の橋で「1年以上通行止めが続いている」ことが判明した。
インフラの老朽化問題に詳しい東洋大学の根本祐二教授は、こうした状況は今後さらに広がっていくと警鐘を鳴らす。
「修理、撤去の予算がまったく確保できない状況が国全体で起きていて、通行止めにするしかありません。
1970年代の高度成長期に橋は年間およそ1万本架けられていました。
耐用年数を60年ほどと考えた場合、2030年にはこの1万本の橋を架け替えなければならない計算となり、
老朽化はこれからもっと深刻になっていくと考えられます。
点検や修理などに手をこまねいている間に、さらに老朽化が進む悪循環が非常に懸念されます」
「これまでと同じようにすべてのインフラを維持するのは『不可能だ』と皆が認識する必要があります。
その上で「では、どのようにたたんでいくのか」を真剣に議論する時期に来ています。
そして、議論する時には、橋だけではなく、学校や図書館、文化ホールなどの公共施設も含め、
インフラ全体の中で優先順位を付けて、予算を配分していくことが必要です」
(NHK)
‘@人口減少過疎化が進む現在の日本では、こういった事例がますます増える。
捨て置くしかないということになる。
朽ち果てた建造物が身近にあると、住民の心は萎える。
そして、二次被害だけは避けなければならない。
現状と先を見据えた住民と自治体の話し合いが大事だ。