フィリピン軍と米軍の合同演習でのハイマースの実弾射撃訓練 Eloisa Lopez - REUTERS
<台湾や南シナ海での有事に米軍の即応展開が可能に>
フィリピン政府は4月3日、米国との「米比防衛協力強化協定(EDCA)」に基づく、
フィリピン国内で米軍が新たに使用可能な基地など4カ所について詳細を明らかにした。
2月に米オースティン国防長官がフィリピンを訪問してカリート・ガルベス比国防相と会談した際に、
これまで米軍が使用可能としてきた5カ所に加えて新たに4カ所増やし合計9カ所とすることで合意していた。
新たに米軍がフィリピンでの演習などで展開する場合に使用が可能となる中には、
南シナ海の南沙諸島に近い南西部パラワン州のバラバック島が含まれる。
バラバック島はバラバック海峡を挟んでマレーシア・ボルネオ島から約50キロの位置にある。
マレーシアも南シナ海で中国との領有権問題を抱えている。
今回追加された米軍が使用可能な基地などはそのうち3カ所が北部ルソン島の北東部に位置する。
そしてルソン島の北方には台湾海峡を経て台湾がある。
このため追加されたルソン島の3基地は台湾有事を視野に入れたものとみられており、
米政府が台湾有事にここから米軍を展開することが予想される。
また南部パラワン州最南端部沖合の離島バラバック島は、
中国が一方的に海洋権益を主張してフィリピンと領有権争いを繰り返している南シナ海に面している。
特に南沙諸島に近い位置にあることから南シナ海問題への米国の主張を明確に中国に送るものとなった。
中国側の猛反発が予想される。
比大統領府は「新たに追加された4カ所は戦略的に極めて重要だ」としている。
比政府はEDCAに基づく基地などはあくまで米軍の使用が可能な場所であり、米軍が常に駐留する米軍基地ではないと強調。
自然災害などの救援活動にも携わる場所であり、普段はフィリピン軍の物資集積所などとしての機能も有していると説明。
新たに追加された4カ所のうちルソン島北東部カガヤン州のマヌエル・マンバ知事は「米軍の使用」に反対を表明している。
マンバ知事は有事などに米軍が基地や空港を使用して展開することになれば、
米中の対立に同州が巻き込まれる恐れがあり、州民の安全確保の観点から異議を唱えている。
マルコス大統領は1月に北京を訪問し、習近平主席との首脳会談に臨み、その席で南シナ海問題を提起し、
習近平からは「友好的な協議を通じて解決したい」との言質を得た。
しかしその後も中国海警局船舶による南シナ海で、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)ヘの侵入や、
フィリピン沿岸警備隊艦艇へのレーザー照射事案など悪質な嫌がらせや妨害行動が続いており、
フィリピンの対中世論は厳しさを増している。