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​映画『Fukushima50』は美化されすぎ?

原子炉から少し離れた高台に、吉田所長が陣取っていた免震重要棟があった。

そこの非常用発電機は生きていた。

ケーブルをそこからつなげば、原発を再び制御できる可能性があったが、

時間がかかりすぎるため実行しなかった。



電源の復旧を試みていた作業員がこんな会話をしていた。

「免震重要棟の非常用電源からケーブルつなげないですかね」

「350mあるんだぞ。こんな重いケーブル、何日かかるかわからん」

しかし、福島第一から南に110キロのところにある日本原子力発電の東海第二原発は、

事故前からそのケーブルがつないであった。完成したのは、東日本大震災の1カ月前。

この電源対策のほかにも、敷地の一部を盛り土でかさ上げしたり、

原発建屋の入り口を防水扉に取り替えたり、防潮堰を設けたりする津波対策を進めていた。

東海第二も大津波に襲われたが、これらの工事の効果もあり、ぎりぎりで大事故を免れていた。



保安院の小林勝・耐震安全審査室長の調書によると、2009年ごろから、

東日本大震災と同じクラスの危険性が保安院内でも問題になっていた。

独立行政法人産業技術総合研究所」の岡村行信活断層地震研究センター長は、

貞観地震が福島第一周辺を襲った痕跡を指摘。

自らの調書では「四百~八百年周期で反復していると考えている」と述べた。

岡村氏らの指摘を受け、小林室長らは貞観津波の再来リスクを検討するよう保安院幹部に提案したが、

複数の幹部から10年に「あまり関わるとクビになるよ」

「その件は原子力安全委員会と手を握っているから、余計なことを言うな」とくぎを刺されたという。

保安院の幹部の中には、地震津波対策より国策の推進を重視する体質があった。

事故に備えた防災重点区域を検討しようとした原子力安全委員に、

院長自らが「寝た子を起こすな」と圧力をかけたことも判明している。

2008年、東電でも本店の技術者たちは、「福島第一でも津波対策は不可避」と結論づけていた。



東電の地震津波対策を担当する吉田昌郎原子力設備管理部長(当時)らは、

10年3月ごろの朝会合で、保安院の担当者から「貞観地震津波が大きかった」と指摘された。

しかし、東電幹部は対策を2016年まで先送りすると決めた。

その意思決定の中心にいたのは、ほかならぬ吉田所長だったとされる。

氏は、2007年4月から2010年6月まで、東電本店の原子力設備管理部長を務めている。

津波の想定や対策の担当部長、吉田氏にも相応の責任があった。

そのころ、原子力設備管理部は、津波の専門家たちに根回ししたり、

文部科学省地震予測の報告書を書き換えさせたりして、

東電の津波対策が遅れていることを露見させないように工作を続けていた。

そんな最中、日本原電は東海第二の津波対策を進めていた。

日本原電の幹部は

「他の電力のことも考えながら対策をやるというのが原則でして。東京電力とかに配慮をしながら、

物事をすすめるという習慣が身についている。対策をやってしまえば、

他の電力会社も住民や自治体の手前、安全性を高めるため対策をとらないといけなくなる、

波及するわけです。だから気をつけている」と、NHKの取材に吐露している。



福島第一から北に115キロ離れた東北電力女川原発は、2008年11月に、

津波を予測する報告書をまとめていた。

宮城〜福島沖で発生した貞観地震(869年)についての最新の研究成果を取り入れていた。

ところがこの内容は東電にとって都合が悪く、福島第一に適用すれば想定される津波は、

敷地の高さを超え、対策を迫られるものだった。

そこで東電は、東北電力に圧力をかけ、報告書を書き換えさせた。

その決定がされた東電社内会議(2008年11月13日)のトップは、

当時の社内メールによると吉田氏だったとみられている。

2010年6月、吉田氏は福島第一所長に異動。その9カ月後、大津波に襲われる。

「想定外の大津波」ではなかったことは事故直後から証言されていた。

映画パンフレットに書かれているような「人間の想定を超えた事態」ではなかった。

日本原電や東北電力と同じ程度に津波対応を進めていれば、避けられた事故だったのだ。




事故後に電話で話した自治体関係者に、吉田所長は「申し訳ありません」と謝り続けていたという。

菅首相が来たことで、ベントが遅れたか。

「全くないです。総理が飛んでいようが、炉の安全を考えれば、早くしたいというのが、

現場としてはそうです」

水素爆発の可能性は全く考えなかったのか。

「われわれは思い込みが強いんですけれども、格納容器の爆発をすごく気にしたわけです。

今から思えばあほなんですけれども、格納容器が爆発するぐらいの水素、酸素が発生しているのに、

それが建屋にたまるところまで思いが至っていない。今回の大反省だと思っているんだけれども、思い込みが」

ICの情報は把握していなかったのか。

「基本的に、把握していなかった。本当はICが大丈夫なのかということを何回も私が確認すべきだった。
思いこみがあって、水位がある程度確保されているから大丈夫かなと思っていた部分があります」

ICは、圧力容器の蒸気をタンクの水で冷やして水に戻し、その水を注水する仕組み。

「炉水位があるんじゃないかという思いこみがあり、私から聞かなかったことに関して、

今、猛烈に反省している」

当初から、官邸には情報が集まらず、原子力安全・保安院(廃止)の知識不足が問題になっていた。



電源喪失、冷却機能停止」の報告を受け、菅首相は、

エキスパートであるはずの寺坂信昭・保安院長を呼び、説明を求める。

「回復できるのか」「原因は何か」と問うが、寺坂氏は、東京大経済学部出身で「専門家ではありません」と要領を得ない。

菅首相は調書で「責任者に、原子力の専門的な知識を持たない人がなっているというのは、

もちろん部下でありますから、私にも行政のあり方として、広い意味では責任があるが、

率直にびっくりした」と話している。


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