埼玉県内の医療機関で、コロナ患者への対応能力が逼迫しつつある。
感染拡大に、現場の医師は危機感を訴えている。
2日、新型コロナに感染した中等症と重症の患者を受け入れる埼玉医科大学総合医療センター
(川越市、1063床)では、コロナ患者に即時に対応できる23床がすべて埋まった。
このため、敷地内に設けた仮設病棟(10床)を初めて稼働させ、症状が改善した3人を移した。
重症者が増えたため、コロナ専用の集中治療室(ICU、4床)も動かした。
治療の指揮を執っている岡秀昭教授(46)は、現状について、
「スタッフは疲労がたまり、医療事故が起きかねないレベル」と不安を募らせる。
4日の時点で「今のスタッフで対応できるのは、中等症用21床と重症用6床。これで限界」と言う。
全てのコロナ対応の病床を動かすにはさらに人員を集め、病院の他の診療を制限する必要がある。
「世間には『県全体で確保病床が5割、重症用病床が3割だけしか埋まっていないなら大丈夫』
という声もあったが、『全く違う』と知ってほしい」と、強く訴える。
国や自治体の対応には、もどかしさを感じている。
東京都内では市民の行動への抑えが効いていない。
夏休みも始まり、感染者数が増える要素しかないが、すでに医療現場は崩壊を迎えつつある。
「政府は危機感が伝わる言葉を発してほしい」と切に願う。
さらに、県の入院調整が困難になった場合、
県には「県民が楽観論にひきずられないようきちんと伝えてほしい」と注文。
「感染者数を減らすには、ワクチン接種とともに危機感を市民と共有することが大切だ」と指摘。
川口市の埼玉協同病院(399床)は中等症以下の患者を受け入れているが、
最近は入院患者が増え、ぎりぎりの対応を迫られている。
救急科の守谷能和科長(45)は、
「最近の感染例はワクチンの効果か高齢者が少なく、働き盛りの年齢層が多い。
基礎疾患がない人でも、特に男性は症状が悪化する人が多いと感じる。
翌朝、体調が急変していないかと毎日どきどきする」と。危機感を訴える。
重症など症状が悪化した患者が出たときに、受け入れ可能な医療機関が見つかるかどうかだ。
「今後、転院先が見つからなくなったら、うちで診るしかない」と言う。
重症者や重症化のリスクが高い人に入院を制限する政府の新方針については、
「その瞬間だけを切り取って、今後の症状の変化を見極めるのは難しい」と、疑問を投げかける。
救急科の後藤慶太郎部長(46)は、
「東京五輪で日本勢が金メダルを取った速報が流れている間に、
医療現場が大変な状況になっていると伝えたい」と強調した。