ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れる変異の発見。
発表者 佐藤 佳
(東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野 准教授)
新型コロナは、2021年6月現在、現在進行形の災厄です。
現在、世界中でワクチン接種が進んでいますが、このウイルスについては不明な点が多く、
感染病態の原理やウイルスの複製原理、免疫逃避と流行動態の関連について,
ほとんど明らかになっていません。
細胞性免疫からの逃避の可能性については報告がありませんでした。
本研究では、まず、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の一部が、
(白血球の血液型)「HLA-A24」という、日本人に多く見られる型の細胞性免疫によって、
きわめて強く認識されることを、免疫学実験によって実証しました。
次に、75万配列以上の新型コロナウイルスコロナウイルス流行株の大規模な配列解析を行い、
スパイクタンパク質のHLA-A24で認識される部位に、いくつかの重要な変異があることを確認。
2020年にデンマークで流行したY453F変異と、
世界中で流行が続くデルタ株(インド)とイプシロン株(カリフォルニア)のL452R変異というアミノ酸変異。
更に免疫学実験により、これらの変異はいずれも、HLA-A24による細胞性免疫から逃避することを実証。
これは、「懸念すべき変異株」が、細胞性免疫から逃避することを実証した世界で初めての成果です。
本研究で見出したY453F変異とL452R変異はどちらも、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の中でも、
新型コロナウイルスの感染受容体に結合するモチーフの中の変異でした。
そこで次に、これらの変異が、ウイルスの感染と複製効率に与える影響を、ウイルス学実験で検討。
その結果、L452R変異は、ウイルスの膜融合活性を高め、感染力を増強させることを明らかにした。
上述の通り、L452R変異は、現在世界中で流行拡大しているデルタ株に特徴的な変異です。
また、L452R変異による免疫逃避に関わる、細胞性免疫を担うHLA-A24というタイプの白血球抗原は、
約60%の日本人が持っています。
L452R変異は、日本人に多いHLA-A24による細胞免疫から逃避するだけでなく、
ウイルスの感染力を増強しうる変異であることから、この変異を持つデルタ株は、
日本人あるいは日本社会にとって、他の変異株よりも『危険な変異株である』可能性が示唆される。
本研究成果は2021年6月14日、米国科学雑誌「Cell Host & Microbe」オンライン版で公開された。
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