せっかく作り上げた科学インフラと専門知を崩すな!
意訳。
小野昌弘(イギリス在住の免疫学者・医師)
重要な点として、オミクロンによる重症化率は特に若年者でより低くなる傾向がありますが、
高齢者や持病のある人ではオミクロンでも(デルタと比べて)それほどは重症化率が減ってくれていません。
コロナで重症化しやすいひとは、オミクロンでも同様に危険があるので、
感染予防やブースター接種で身を守る必要があります。
オミクロンはデルタとよく比較されますが、そもそもデルタが従来株より病原性が高い変異株である。
また、軽症〜中等症のコロナ感染後にもコロナ後遺症がありえることも問題です。
オミクロンでどの程度コロナ後遺症が起こるのかについてはまだ未確定です。
ここで科学的に重要なのは、オミクロンとそのほかの変異株(デルタ、アルファなど)は、
免疫学的に(とくに抗体という観点から)とても違うということです。
デルタでできる免疫からオミクロンは逃避するので、デルタ感染したことがある人にも簡単に感します。
この逆もまた理論的には考えられます。
そして、次の変異株は、オミクロンともデルタとも異なるタイプの、
免疫学的特性をもつ変異株が問題になる可能性もまた十分にあります。
高齢者などコロナ感染でリスクが高い人ほど免疫は不安定になりがちなので、ブースター接種が重要になります。
オミクロンてパンデミックが終わるのか。
これは「そうであれば良いな」と思う夢のような話ですが、
残念ながら変異株の発生は終わらないという事実は変わりません。
オミクロンがほかの変異株とは免疫的な性質がとても違うことから、
オミクロン感染でできる免疫はデルタなど他の変異株に対してはそれほど期待ができません。
デルタを駆逐しきれずにオミクロンとデルタが交互に流行するというシナリオもあります。
さらに可能性が高いのは、デルタでもオミクロンでもない新しい変異株が半年〜1年後に、
世界のどこかから出現して再び大流行するというシナリオです。
以上のことから、科学者の個人的見解としては、オミクロンの登場自体は、
とくにパンデミックの終わりが近いことを示すものではないと考えます。
むしろオミクロンは新型コロナが予想以上に大きな「振れ幅」をもつことを示したことが科学的には重要です。
予測が簡単ではないゆえに、リアルタイムでデータを取得して判断していくことがますます重要になったといえます。
また社会的にも、オミクロン大流行の被害が国によって大きく違うので、2022年の世界の動向が読みにくくなったといえます。
科学技術のおかげでパンデミックの核心的問題は少しずつ、より上手に制御できるようになってきています。
こうした新しい道具と知識をうまく使っていくことがコロナに安全な社会を作っていく上で、
より重要になっていくと思われます。
ここを間違えて、せっかく作り上げた科学インフラと専門知を小馬鹿にして、
この2年間積み上げてきたものを崩してしまうと、オミクロン流行への対応における問題だけではなく、
近い将来、新しい変異株流行のときにしっぺ返しにあってしまうことになると考えられます。
‘@私も強く同意する。