132億円の補助金「ぼったくり」?
政府分科会の尾身茂会長が理事長を務める、地域医療機能推進機構(JCHO)傘下の、
東京都内の5つの公的病院で、183床ある新型コロナウイルス患者用の病床が、
30~50%(8月29日現在)も使われていないことが、AERAdot.編集部の調査でわかった。
5病院のうち最もコロナ患者の受け入れに消極的だったのは、東京蒲田医療センターだ。
コロナ専用病床78床のうち42床が空床で、半数以上を占めた。
その他には、東京山手メディカルセンターは37床のうち35%(13床)が空床となっている。
都の集計によると現在、自宅療養者は2万人以上、入院治療調整中の患者は約6800人に上る。
厚労省関係者はこう批判する。
「尾身氏は国会やメディアで『もう少し強い対策を打たないと、病床のひっ迫が大変なことになる』
などと声高に主張していますが、自分のJCHO傘下の病院でコロナ専用ベッドを用意しておきながら、
実は患者をあまり受け入れていない。こんなに重症患者、自宅療養者があふれているのに、
尾身氏の言動不一致が理解ができません。JCHOの姿勢が最近になって問題化し、
城東病院を9月末には専門病院にすると重い腰を上げましたが、対応は遅すぎます。
そもそもコロナ病床の確保で多額の補助金をもらっていながら、
受け入れに消極的な姿勢は批判されてもしかるべきではないか」
「病床確保支援事業」では新型コロナ専用のベッド1床につき1日7万1千円の補助金が出る。
ベッドは使われなくても補助金が出るため、東京蒲田医療センターでは、
使われていない約40床に対して、単純計算で、1日284万円、1か月で約8500万円が支払われることになる。
その上、新たに重症患者向けの病床を確保した病院に1床あたり1950万円、
中等症以下の病床には900万円を補助するなどの制度もある。
厚労省関係者から入手した情報によると、2020年12月から3月だけでも、
JCHO全57病院で132億円の新型コロナ関連の補助金が支払われたという。
「コロナ病床を空けたままでも補助金だけ連日、チャリチャリと入ってくることになる。
まさに濡れ手で粟で、コロナ予算を食い物にしている。受け入れが難しいのであれば、
補助金を返還すべきです」(厚労省関係者)
尾身氏は厚労省OBでJCHO理事長に14年より就任している。
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は「JCHOの存在意義が問われる」と指摘する。
「そもそもコロナ患者を受け入れる病床数も少ないですし、
このような危機的な状況で患者受け入れに消極的というのであれば、
補助金を受け取る資格はないし、民営化したほうがいいのではないでしょうか」
AERAdot.編集部が、JCHOにコロナ患者の受け入れの実態を質すと、
8月27日現在の数字として、5病院全体では確保病床の30%が空床であり、
東京蒲田医療センターでは約50%が空床であることを認めた。
「蒲田医療センターに関しては、8月初旬ではコロナ患者の受入は20数人で、
搬送要請を一貫して避け続けていた。恒常的に人手が足りずに対応できないのなら、
補助金だけ受け入れ続けるのは、あきらかなぼったくりだと思います」(前出の厚労省関係者)
尾身会長は、「JCHOは、国からの要請に基づきJCHO以外の医療逼迫地域(北海道・沖縄等)の病院へ、
全国のJCHO病院から看護師の派遣を行ってきました。
しかし、全国的な感染拡大に伴い、各地域においても看護師のニーズが高まってきた結果、
全国のJCHO病院から当院への派遣が困難となってきました。
8月16日から看護師を追加で確保し、受け入れ増加に向けて取り組んでいます」
JCHO全体の取り組みについて、国や自治体からの要請に応じてきたものであり、
要請に積極的に応えてきましたと回答。
‘@だとすれば、JCHO、尾身会長でさえ無理なのに、
他の病院で医療従事者を採用することは、かなり困難ということになる。
裏を返せば、その件で医師会を批判するのは無理筋ということだが、
真実は如何に。