2019年の11月の末か12月の初めには、感染者が確認されていた。
1ヵ月後には、感染者の多くが主として水産物を扱う武漢華南海鮮批発市場の関係者と分かり、
翌20年の1月1日から市場は閉鎖された。
中国当局は、繰り返し否定しきたが、
今年の3月4日、フランスの国立科学センター(CRNS)のウイルス研究者で、
大学でも教えるフロランス・デバールが気づいたのだが、
インフルエンザ関連のデータ・センター(GISAID、本部はワシントンDC)に、
武漢の市場で採取された遺伝子配列データが、中国から2022年6月付で登録されていた。
彼女を中心とするグループは、それらのデータをあらためて調べ、5日後の9日には、
新型コロナといっしょに8種類の野生動物とヒトの遺伝子が混在しているのを確かめた。
野生動物は、タヌキ、ハリネズミ、ヤマアラシ、タケネズミ、マーモット、ハクビシン、イタチ、ブタバナアナグマだった。
それらのうちで、店頭でもっとも多く見つかったのがタヌキの遺伝子だった。
検討結果は、論文として3月20日に公開された
売られていたタヌキが感染源だと、限りなく断定に近い表現になっている。
論文では、8種類の野生動物の比率は示されていない。
ところが、不可解なことに、中国からの申し出によって、肝心のデータそのものが3月11日に取り下げられた。
武漢の市場にタヌキを供給したのは、武漢と同じ省内、湖北省西端の山岳地帯、恩施(エンシ)地区に存在する飼育場群と推定される。
飼育数は総計で100万匹とも伝えられる。この地帯は洞窟も多く、そこがコウモリの巣窟になっている。
この疫学モデル「ウイルス→コウモリ→仲介動物→ヒト」は、2002年11月から翌年7月にかけてのSARSの場合と、パターンが同じだ。
シンガポールで発行される新聞「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」(2020年3月4日付け)が伝えるところでは、
中国の毛皮業界の従業者は1400万、年間の売り上げ高は5200億元(740億ドル)に達する。
中国皮革協会によると、2021年の毛皮の生産枚数は、キツネが1100万、タヌキが919万、ミンクが687万。
(週刊現代)