クーリエ・ジャポン
明治神宮外苑の再開発について見直しを求める声が高まるなか、この件に海外からも注目が集まっている。
米紙「ニューヨーク・タイムズ」は特に明治神宮野球場に着目。歴史的・文化的価値のあるこの球場を失うとはどういうことか。
東京の中心部にある明治神宮野球場は、およそ100年にわたり、数多くの重要なイベントの舞台となってきた。
ベーブ・ルースやルー・ゲーリッグが日米野球でプレーし、小説家の村上春樹はこの球場で野球観戦をしていたときにデビュー作の着想を得た。
2022年には、ヤクルトスワローズの村上宗隆が記録的なホームランをスタンドに打ち込んだばかりだ。
神宮外苑地区は歴史的な緑地だ。「日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一が植樹に携わった、樹齢100年のイチョウ並木で知られる。
だが、大規模な再開発計画により、神宮球場は取り壊され、現代的な施設に建て替えられようとしている。
「東京は魂を失うことになるでしょう」東京大学名誉教授の石川幹子は、この再開発計画についてAP通信にそう語った。
「ニューヨークのセントラルパークのど真ん中に、超高層ビルを建てるようなものです」。
1934年、日米野球で、ベーブ・ルースは通算13本のホームランを打って観客を魅了したが、うち5本は神宮球場で放たれたものだ。
この日米戦は、のちに日本プロ野球界に君臨する読売ジャイアンツの結成につながるなど、その影響はいまなお感じ取ることができる。
それから44年後、神宮球場の外野席でビールを飲みながら野球観戦をしていた村上春樹は、
「バットが速球をジャストミートする鋭い音」にインスパイアされ、帰宅途中にペンと紙を買い、すぐさま小説『風の歌を聴け』を書きはじめた。
そして2022年、ヤクルトスワローズの村上宗隆はこの球場でシーズン56本目の本塁打を放ち、王貞治の持つ日本人選手のシーズン最多記録を更新し、歴史に名を刻んだ。
この計画は、野球史ファンや日本ラグビーの歴史を重んじる人々、自然環境への影響を懸念する環境保護活動家など、さまざまな層から厳しい批判にさらされている。