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ロシアが目論む「金本位制の復活」

BRICS共通通貨は本当に米ドル支配を終わらせられるか。

BUSINESS INSIDER JAPAN

(抜粋)

BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は、8月22日から24日の間、南アフリカの首都ヨハネスブルクで首脳会議を開催する。

首脳会議では、ロシアが「金本位制」に基づく決済通貨の導入について審議を求めているという。

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その際、米ドル支配の脱却を視野に、BRICS諸国でいわゆる「金本位制」に基づく共通の決済通貨を導入するという構想を審議するよう、ロシアが提案した模様。

この制度は、各国の中銀が保有する金(ゴールド)の量に応じて、通貨(紙幣)を発行するというものである。

一方で、中銀は設定したレートに応じて、金と通貨の交換に応じなければならない。

つまり「いつでも固定レートで金と交換できることを保証する通貨制度」が、金本位制

第二次世界大戦後、いわゆるブレトン・ウッズ体制の下で、米ドルが世界の基軸通貨となった。

各国の為替相場は、自国通貨と米ドルとの間の通貨レートが重視されているのが現状。

こうした状況を米ドルによる「支配」であるとし、そこからの脱却を目指すべきという論調は、新興国の反米左派政権にありがちな主張だ。



実際に、米ドルに代わる資産として、中国の通貨・人民元や、金の保有を増やす新興国も着実に広がっているようだ。

金の保有量、トップを走るのがロシアであり、その量は2022年10-12月時点で7480万トロイオンスに上っている.

日本の外貨準備高に占める金の量は2023年5月時点で2720万トロイオンスだから、ロシアは実に日本の2.7倍の金を保有していることになる。

2位は中国であり、2022年10-12月時点で6650万トロイオンスの金を保有している。

金本位制に基づく共通通貨を発行することで最も利益を得る国は、ロシアかもしれない。

とは言え金だけで外貨準備高を構成することは難しい。それに、本格的な金本位制に基づいて共通通貨を発行しようとすると、その実として、ロシアはマクロ経済政策の裁量を失うことになる。

ルーブル安で原油の輸出を促すといった、ロシアらしいマクロ経済政策が不可能になる。

ウクライナとの戦争が長期化する過程で、ロシアでは軍事費が急激に膨張しており、それが財政を圧迫している。

そうした国が、ルールベースでの経済運営などできるわけがない。

それに、新興国との関係を優位に運びたい本音がロシアにあるとして、ロシアの思惑に賛同する新興国が果たしてどれだけあるのか、定かではない。

BRICSの中ではブラジルも共通通貨の構想に賛同しているが、その中心にロシアを据え置くべきだと考えているか、定かではない。

そして中国やインドは、共通通貨の議論に形だけは参加しつつも、この構想から距離を置き続けるのではないだろうか。

あくまで中国は中国の思惑に基づいて、人民元の国際化を図るだけだろう。インドもまたインドの思惑に基づいて、通貨ルピーの国際化を図っていくはずだ。

両国が金本位制に基づくBRICS通貨に対して積極的となる理由は乏しい。

米ドルの覇権が未来永劫にわたって続くわけではない。とはいえ、今回のこのロシア発のBRICS共通通貨が、米ドルに取って代わるものになるという展開は、まず考えにくい。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

土田 陽介

‘@分かりやすい。