第7波「重症者は少ないという淡い期待は打ち砕かれた」
第7波では重症者は増えないかもしれない、という淡い期待は既に打ち砕かれている。
およそ1週間前に増え始めたコロナ患者の入院は、倍々で増加を続け、
気付けば中等症以上の患者を主に受け入れる当院・埼玉医科大学総合医療センターの、
コロナ病棟は40床のうち31床が埋まった。
入院を必要とする患者の半数は高齢者施設内のクラスターで感染した人々だが、
40代や50代の重症患者も4人入院している。
現在までに重症となる患者は皆、ワクチン未接種あるいはワクチンを2回までしか接種していない。
急速な感染拡大が続く中、当院での第7波における重症者の総数は既に第6波を上回った。
少し前まで第7波では重症者は増えないかもしれない、という淡い期待を抱いていたのも事実だ。
しかし、期待は既に打ち砕かれている。
第7波では今まで以上に病床をフル稼働させることが難しく、受け入れ体制は間もなく限界を迎える。
当院でもおよそ100名近い医療従事者が自身の感染や、家族の感染に伴い現場を離脱している。
影響は甚大で、病棟1つ分以上の戦力が削がれている。
このままのペースで感染拡大が続けば、ますます患者の受け入れは厳しくなるだろう。
なぜ、重症者数が増えてきたのか。
ワクチン接種によって獲得した免疫の減衰による影響も少なくないが、
気がかりな報告が海外から寄せられている。
デンマークからは、BA.5の入院リスクはBA.2よりも65%高いというデータがプレプリントで公表されている。
ポルトガルからも、BA.5による入院リスク、死亡率はBA.2よりも高いとする報告が上がっている。
これらの論文は査読前であるため解釈は慎重にすべきだが、
現場における実感ともこうしたデータは一致する。
感染者数は第6波を大きく超え、いまだピークは見えない。
救急搬送困難事例も増加を続けており、その影響はコロナ医療だけでなく、コロナ以外の医療にも及んでいる。
当院において、これまで最も苦しかったのは第5波だった。
しかし、医療全体への影響という点では第7波は第5波を上回るかもしれない。
「過去最悪」の感染拡大になる可能性があると考える。
このような状態が続けば、重症化の芽を事前に摘むことはできず、
新型コロナによる死者数を最小限に抑え込むことが困難だ。
緊急性の高い手術や治療が受けられないことで亡くなる人々も増える。
実際にこのところ死者の報告が増えてきてしまっている。
高齢のコロナ患者には、軽症のまま亡くなっていく人もいる。
少なくともプライマリケアの現場から高次医療機関の医療現場まで緊急事態に直面しており、
災害モードへ切り替えなければいけない段階に突入している。
現在の状況がこのまま続けば医療がもたないということを、もっと多くの人に知ってもらう必要がある。
政府の「行動制限は行わない」という方針自体に、私は反対の立場ではなかった。
いずれは出口を模索しなければいけない以上、
どこかのタイミングで社会経済活動との両立への道筋を見出さなければいけない。
ただし、今回はそのために必要な準備が不足していたのではないだろうか。
新型コロナを季節性インフルエンザのように扱い、感染者数増加は許容し、
社会経済活動を回していくのであれば、軽症者が増加することは当然の結果だ。
であれば、本来は軽症者が発熱外来へ殺到しない仕組みを整備しておく必要がある。
感染者数が急増すれば社会機能の維持が難しくなることは明らかだ。
たとえ病床を増やしてほしいと依頼が届いたとしても、現時点で対応できる余力は現場にはない。
‘@今頃気付いたのかと言ったら怒られてしまうが、
感染が拡大すれば重症者や死者が増えるのは当たり前。
そのためにも、感染拡大は防がねばならなかったが、
政府もメディアや国民お声にこたえる形で、行動制限をしなかった。
あげく、感染は拡大の一途。
行動制限をしなければ感染が拡大するのは、今までの経験からも当たり前の話で、
沖縄の現状を見ても良く分かる。
結局、医療従事者任せで、年寄りは死んでも良いという対応だ。
しかし、感染拡大の余波はそれだけではすまず、インフラや社会にも影響を及ぼしている。
当たり前のことを理解すべきだ。
感染しない努力を各々がすべきだ。